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VOL.78
消えゆく反抗期
Q 中学生の反抗期の傾向が失われていると思いますか?
YES 51%
N O 49%
Q 反抗期は人生に必要だと思いますか?
YES 87%
N O 13
教育シンクタンク「ベネッセ未来教育センター」の意識調査で、中学生の8割が親との関係は円満と考えている半面、この年代に特有の「反抗期」の傾向が失われている実態が浮き彫りになりました。

「中学生の反抗期が失われていると思うか」「反抗期は人生に必要だと思うか」について意見を募集したところ、7日までに287人(男性218人、女性69人)から回答がありました。今回は拡大して主な意見を紹介します。
私も言いたい
父親
≪小学生のときに反抗期≫
大阪府、会社員(31)「今はいい思い出だが、反抗期は自分、親にとってもややこしい時期だった。10数年後、自分が親として、反抗期の子供に接すると思うと、つらいけど、その後の親密な関係ができると思う」

神奈川県、会社員(38)「中学生の反抗期が縮小傾向にあると分析されるが、自分の周囲では反抗期は小学生のときに終わったという親がかなりいる。全般的に早熟になった」

埼玉県、公務員(45)「反抗するほど親との接触がない。反抗しなくても親が先回りして何でもやってしまう。その分、子供は社会や学校に反抗している感じだ」

熊本県、自営業(48)「新しい時代を切り開くことが若者の誇り。親や大人の世界に反抗しない姿勢は心もとない」

埼玉県、会社員(49)「なぜ反抗するか。自分の場合は両親の自分に対する束縛がかなりあったためだ。両親による束縛の向こうには世間があった。以前は存在した地域社会が現在は存在しないか力が弱くなった」

岐阜県、公務員(54)「競争の原理が排除され、欲求不満がないのが反抗しない原因ではないか。話し合いで解決できると教えられ、納得できなければやらなくてもいい子供たちには、世の中の常識や理不尽が見えなくなっている」

大阪府、無職(66)「息子が中学のころはほとんど会話をした覚えがありません。しかし、高校に進みアルバイトをするようになると、親が言っても聞かないことをバイト先で言われて聞くようになりました」

母親
≪家庭円満は親のエゴ?≫
大阪府、主婦(32)「最近の親は子供は友達という感覚。1点豪華主義のおもちゃみたいです。反抗期があったとしても、親は子供の言いなり。これから子供を産む私も自信がありませんが…」

福井県、主婦(40)「強い反抗期を持った私や弟と違い、1人になることができないわが子に奇異の目を向けています。自分の部屋を持ちながら、寝るときも勉強するときも親のそばを離れません」

青森県、主婦(43)「わが家には小学4年生の息子がいますが、今まさに反抗期。今の中学生に反抗期が見られないのではなく、すでに小学生の時期に通過したとは考えられませんか」

神奈川県、主婦(44)「今の子供たちは精神的に大人。小学生で親の相談相手ができるほど成熟し、中学生になれば理想と現実の違いも区別できる。それほど摩擦が起きる事態にならない」

大阪府、主婦(45)「家族と一緒にご飯を食べることがなく、自分のことは自分で考えているからと言い放つ高校生の息子を喜ぶべきか。それより家族円満な時間を一緒に過ごしたいと思うのは親のエゴか。子供の反抗期で親も子離れさせてもらえるのかも」

東京都、無職(48)「昔と違い価値観が多様になって親が明確な自分の価値観を示せないでいる。これに反抗することが難しくなっていて自立を遅らせているのではないでしょうか。厳しい世間に対応できない若者が増えていることと関係がないとはいえないと思う」

東京都、無職(51)「最近はどこの家庭でも子供の将来や生活や好みに対して、あれこれ親が口出ししなくなった。つまり、親子間での摩擦の原因がなくなった。私自身が、何をするにも駄目出しをした母親に反抗するように、わが子には自由にさせている。今や甘やかされた子供たちの最大の反抗相手は世の中の大人かもしれない」

10代
≪あきらめている≫
宮城県、女子中学生(15)「親にわかってほしい、どうにもならない感情が毎日沸いてくる。でも、親はさらっと流すか、さらに嫌な方向へ持っていく。みんなあきらめているから反抗しないんじゃないかな。良い子に見えて、結構すごいことを言ってるよ」

神奈川県、男子高校生(17)「私も親とはあまり衝突しません。ですが精神的自立が遅れているとも思いません。問題は親との関係が希薄になることです」

大阪府、男子大学生(19)「目に見えていないだけ。表面だけ円満ということもある」
20代
≪信頼関係がある≫
海外在住、女性(22)「中学生が親や周囲の大人に反抗することなく生活できることが不思議でなりません。ですが、反抗期イコール親との関係が円満でないというのは、おかしい。反抗できるほど信頼できる親だから、わが子の反抗期を受け止められる信頼関係があるからこそ、反抗するのではないかと、自分の経験を通して思います」

東京都、男性公務員(27)「最近の中学生は賢いので、こういうアンケートに正直に答えなくなっているだけなのではないか。反抗期はあると思う」

京都府、会社員男性(29)「反抗期がなくなったのではなく、反抗を避けるために親が子供と本気で向き合おうとしなくなった。友達のような親子など、親が責任を放棄している。道徳的に子供の手本であろうとする親、大人がいなくなった。子供も親も打算的な関係になっていると思う」

高齢者
≪少子化に付随≫
宮崎県、無職男性(70)「反抗期が消えたのは少子化に付随する現象ではないか。子供の自立を遅らせ、将来ボディーブローのように効いてきて国家社会の弱体化につながると危惧される」

東京都、無職男性(70)「親と子供は反面教師の部分もある。少子化で親の教育が行き届いているか、友人に恵まれていないかどちらかだろう」

精神科医・香山リカ氏
≪自我芽ばえ反抗が正常≫
臨床の場でも親世代と中学生が激しく対立するケースは目立たなくなったという印象はある。素直で反抗しない仲良しタイプの親子もいるとは思うが、自我が芽生えるときには大人に反発するのが正常。反抗期がなかったという青年に聞いてみると「親に見捨てられるのが心配で取り繕っていた」などとこたえる。背景には、今は愛されていても、そうではない自分を見せてしまったときにも受け入れてもらえるという信頼関係が親子間で築けていないことがある。実際には親が冷たくなっているわけではない。こうした自己肯定感の低下はさまざまな場面で問題になっているが、よく原因はわかっていない。

川村学園女子大学教授・斎藤哲瑯氏
≪親が対立避け「円満」≫
子供の成長過程で反抗期がなくなることはない。だが、子供に口ごたえをされたり、呼んでも返事をしないことに耐えられない親が増え、親の側からそういう場面を避けて先回りしてしまう。それを子供たちは、親子円満と受け止めているのではないか。自立心や社会性を養い、自分と違う考えを持った人との対処の方法を身につけるためには、壁を乗り越えて自信をつける経験が必要だが、親はハードルを下げ、迂回(うかい)路まで用意している。これでは反抗する状況がなくなってしまう。また、今は母親が息子にも娘にもべったりで、父親と子供との関係が薄れている。これも反抗期を目立たなくしている。
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