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緊急アンケート
支持政党の変更
そのときどきの状況や政策によって支持政党を変える「そのつど支持層」。今回の衆院選ではどう動いたのだろうか。産経Web上で選挙後、前回衆院選(平成15年)との投票行動の変化について、緊急調査を行ったところ、今回、選挙区か比例代表で民主から自民に“乗り換えた”人は全体の約3割に達し、無党派層だけでなく、民主党支持層でも目立つことが分かった。決断した時期は「解散前後」が多く、やはり、小泉純一郎首相の劇的な行動が決め手になったようだ。
私も言いたい
政策見て…
「そのつど支持層」はいわゆる無党派層や、政党支持者でも“ガチガチ”の支持ではなく、そのときの状況や政策、党首によっては、他党に“浮気する”可能性がある有権者のことだ。東京など大都市圏では、有権者の半数以上を占めるという見方もある。

「民主党には政権能力、日本を良くするという意思が足りないと感じた」。埼玉県の男性会社員(30)=無党派=は今回、選挙区・比例とも自民に投票。前回(どちらも民主)とは、投票行動をそっくり変えた。

東京都の男性会社員(31)は結党以来の民主党支持者だが、「小泉首相の郵政改革に対する不退転の決意」を見て、今回はどちらも自民党に投票したという。

緊急調査の結果を見ると、このように選挙区・比例とも、民主→自民に“総入れ替えした”と答えた人は全体の2割以上に上る。

従来は、「バランスを取るため」「与党を大勝させない」などの理由で、選挙区は自民、比例は民主、と振り分けて投票する有権者も多かったが、今回はそうしたケースも減っている。

愛知県の男性(54)=自民党支持=は「牽制(けんせい)役として民主党に期待したが、しょせんは野党だった」。神奈川県の女性会社員(38)=無党派=も「民主党の若手に期待していたが…政権を任せられない」と手厳しい。

ターニング
民主→自民に変更した理由を聞くと、自民党については、▽小泉首相のリーダーシップ▽郵政民営化法案への対応をあげる回答が目立った。一方、民主党に対しては、政権を預けることへの不安やふがいなさ▽労組頼みの体質に嫌気−などが多い。

また、かなりの人が「解散直後」「参議院で郵政法案が否決されたとき」に(前回との)変更を決断しており、小泉首相の毅然(きぜん)とした態度に気持ちを動かされた有権者が、いかに多かったかが分かる。

本来の支持政党については無党派38%、自民党36%、民主党14%の順。

ただ、支持政党と実際の投票行動は必ずしも一致しておらず、民主を支持政党にあげながら、今回、選挙区、比例のいずれかで自民に投票した人(両方自民の人を含む)は実に民主党支持者の約半数に及ぶ。

逆に自民支持者でありながら前回、民主に投票していた人もおり、「そのつど支持層」が政党支持者の中にも広がっていることをうかがわせている。

無党派6割
無党派層はさらに流動的だ。選挙区・比例で民主↓自民に変えた(両方変更を含む)有権者は、約6割が「無党派」と答えている。

鳥取県の男性会社員(38)は基本的に無党派だが、そのときどきによって支持政党を変える。前回は選挙区・比例とも民主に投票したが、今回は投票所に行ってから、どちらも自民に決めた。「棄権しようとも思ったが、自民党しか浮かばなかった」という。

埼玉県の男性会社員(38)=無党派=は常に「政策次第で支持する」。東京都の男性会社員(47)=同=も「適宜、適正な党を支持する」とし、前回は選挙区は自民、比例は民主に投票したが、今回は両方とも自民に投票した。

支持政党を「党首のイメージ」で決めていたり、だれに投票するかを「投票当日」「投票所へ行ってから」決めているケースが少なからずあることも分かった。

「風」ひとつ、「イメージ」ひとつで大きく左右される有権者。短期間で簡単に支持政党や投票行動を変える有権者が着実に増加しているのは間違いない。

【調査方法】 9月12日から14日まで産経Web上で、▽前回衆院選(平成15年)の小選挙区、比例代表で投票した政党▽今回の衆院選の小選挙区、比例代表で投票した政党▽投票行動を決めた時期▽本来の支持政党(無党派を含む)−などについて聞き、450人(男性370人、女性74人、無回答6人)から回答を得た。

政党選択に変化裏付け 松本正生・埼玉大教授
今回のネット・アンケートでも、「そのつど支持」が「無党派」のわくを超えて広がっていることが明らかになった。

無党派層と政党支持層の比率を比べると、数字の上では無党派層がやや少ないようだが、特定の政党を支持している層でも、支持政党とは別に、そのつど、どこかの政党を選択している人たちが少なくない。政党支持の有無はあまり意味を持たなくなってきている。

このアンケートでの大きな発見は、前回(平成15年)の総選挙で小選挙区・比例代表ともに民主党に投票していた人たちの多くが、今回は双方とも自民党にあっさりとくら替えしていることだ。

これは、わが国の選挙で、候補者の持つ意味が減少し、政党単位の選択になっていることを裏付ける。言い換えれば、自民党、いや、「小泉自民」が有権者に与えたインパクトがいかに強烈だったか、ということだろう。

政治学博士。今回の衆院選のキーワード「そのつど支持(層)」の生みの親。「世論調査と政党支持」「『世論調査』のゆくえ」などの著書がある。
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