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久保純子 インタビュー
フリーアナウンサーの久保純子(33)が、初めてアニメーションのナレーションに挑戦した。DVD「ぼくは はちぞう」(ポニーキャニオン)で、さまざまなメッセージを深く内包し、親子で観たい作品だ。“クボジュン”の愛称で親しまれ、NHK時代はタレント的な見られ方をしたりもしたが、そもそもアナウンサーを志望したのは子供番組を作りたかったから。いま、フリーランスになってその希望がようやくかない始め、また私生活でも3歳の娘の母親として幸せ全快の笑顔がまぶしい。
text & photo by ENAK編集長


子供大好き!
本当にいい笑顔。5年ほど前だったか、NHKアナウンサーとして活躍していたころに会ったことがあるが、タレント並みに、いわゆる芸能ジャーナリズムに追いかけられていたからだろう、その笑顔にはどこか険があった。今の笑顔は…そう、もっと丸いし、輝いている。

久保純子 子供のための語学番組を作りたくてNHKアナウンサーを志した。番組の企画書を書き、提出したこともあった。

小学校時代を英国で、高校時代を米国で過ごした経験の影響が大きい。

「語学はさまざまな価値観をもつ人たちと出会う機会を作ってくれました。言葉は楽しい。その思いが、私の原点ですね。子供のための語学番組を作って未来を生きる子供たちに出合いの楽しさを伝えたかったんです」

だが、NHK時代は夢をかなえることはできなかった。大きな組織で簡単に企画が通るはずもないことは、同じサラリーマンとして想像にかたくない。それ以上にアナウンサーとして日々のニュースを伝えることであっという間に時は流れた。 「20代は何をするにしても“初めて”の連続。それを楽しんでいるうちに駆け抜けてしまいました」

念願の子供のための語学番組
14年、長女が生まれたのを機にNHKを退局。2年間、契約アナウンサーとしてNHKの仕事を続けたが、入局から10年になる16年、フリーランスの道を選んだ。幸い、念願の子供のための語学番組をもつことができた。「クボジュンのえいごっこ」(BS-i=日曜午前9時、TBS=同午前5時45分)だ。

久保純子 「10年かかったけど、努力を続ければ思いはかなうのだと実感しました。また、今だからかえってよかったとも思います。娘を見ながら子供はこんなにも日々変わっていくのだということを体感している今だからできることがある」

番組には毎週、違う8人の子供が出演するが、まず、全員をギュッと抱きしめる。「子供大好きです。道を歩いていても、子供をみつけると抱きしめたくなる。今の時代だとちょっと危ないオバサンかもしれませんね」と笑う。今月28日には、番組から派生したCD付き絵本「クボジュンのえいごっこ」(朝日出版)も出る。

そして、「ぼくは はちぞう」。ちょうど長女がおなかにいるとき贈られ、「すごく優しい作品。子供にも大人にもよい」と、すっかりファンになった絵本「おなかの赤ちゃんとお話ししようよ」(サンマーク出版)の作者である葉祥明の原作をアニメーションにした。

ハチドリの子供として生まれたのに姿形はゾウという不思議なはちぞうが、自分探しの旅に出て、さまざまな出合いの果てに出生の秘密を知る。

「自分たちと違うことを拒絶せず、共生することの大切さを描いています。だけど、伝えたいことを強く押しだしたりせず、あくまで“しっとりとした”メッセージがある。『こうしてはいけない』というのではなく、子供本来の能力で、自分たちで判断させるような内容です」

NHK時代、番組で絵本を朗読したことはあるが、アニメーションのナレーションは初めて。はっきりとした口調で明確に情報を伝えるアナウンサーの仕事とはずいぶん違う作業だったという。

「声優の方の声があり、温かい映像と音楽があるので、観ている人の中にじんわりと入っていくような語り方を心がけました」

何度も録音機に吹き込んでは聴き直し、これでは強すぎるな、などと修正していった。こんな作業は、初任地の大阪放送局時代以来だったが、長女がよい教師になってくれた。傍らで語ってみて、ドキッとして振り返るようだったら、それはトーンが強すぎるからだろう、など考えた。

母は“楽し”!
「クボジュンのえいごっこ」のほか情報番組「ブロードキャスター」(TBS)のキャスターも務めている。こちらは土曜日夜の生放送。また、母親の英語教室を手伝ってもいる。愛娘と過ごす時間が限られないわけでもないが、「納得してくれている」。アナウンサーから英語教室を始めた母親と自身もそうだった。

久保純子「そのかわり夕方以後は、私と娘との“ゴールデンアワー”。濃厚な時間を過ごしています」

相変わらずのきゃしゃな体をフォーキーな服装で包んでいると、一児の母親には見えないが、冒頭に書いたように20代のころと今の笑顔は、何かが違う、ような気がする。

「当時は、追いかけられていたこともあり、家族や自分を守らなくてはと“閉じて”いましたが、今はずっと開放的になっています。近所の商店街で買い物をするのが好き。お魚を値切ったりするのが好き。笑顔が行き交う街での出会いが楽しいです」

近所の商店街で魚の値切り交渉をし、道ばたでよその子供でも「かわいい」と抱きしめてしまう“クボジュン”。“母は強し”か。

「いえ、母は“楽し”です」

母であることの喜びが源泉となった笑顔だから、みずみずしく輝いているのだった。
information
ぼくは はちぞう
ぼくは はちぞう
ポニーキャニオン
PCBG-10718
¥3,990(税込)
第1話『あたらしいいのち』
第2話『ぼくはだれ?』
第3話『たびだちのとき』
第4話『マダラちゃんとヒカゲちゃん』
第5話『レディーバードのもり』
第6話『いろのないのはら』
第7話『ぼくのおかあさん』

ある不思議な光の朝、ハチドリのお母さんが温めていた卵から生まれたはちぞう。だけど、その姿形はゾウにそっくり。花のミツを吸いながら「僕はやっぱりハチドリだよね」。でも、チョウチョはいうのです。「そうねえ。だけど、やっぱり違うみたい」。
「僕ってだれなんだろう」。夕日をみつめてはちぞうは、自分が何者なのかを考えるのです。
ある日、ハチドリのお母さんは、はちぞうに旅に出ることを勧めます。お前に勇気があるのなら、お前とそっくりのお友達のいるところを探して、お前がだれなのかを確かめてきてごらん。
旅に出たはちぞうは、砂漠を飛び越え、「見慣れないやつとは友達になれない」というアヒルの言葉に傷つき、意地悪なカエルやクモと闘い、やがて1頭の子ゾウと出会うのです。子ゾウを探して母親ゾウが現れたとき、はちぞうは黒光りする鉄の筒に気づきます。「危ない!」。その瞬間、はちぞうの意識の中で衝撃的な爆発音とともに何かがよみがえるのでした…。
profile
昭和47年1月24日生まれ。東京都出身。
平成6年、日本放送協会(NHK)入局。大阪放送局をへて8年、東京に配属となり「ニュース11」のスポーツコーナーを担当。
10年、「紅白歌合戦」の紅組司会者に、女子アナウンサーとしては41年ぶりに選ばれ、3年連続で担当。「プロジェクトX〜挑戦者たち」ナレーション、音楽番組「ポップジャム」司会など。
14年、長女出産に伴い退職。2年間の契約アナウンサーをへて16年4月からフリーに。同年10月から「ブロードキャスター」(TBS)、「クボジュンのえいごっこ」(BS-i)。

サイン会
クボジュンのえいごっこ
CD付き絵本「クボジュンのえいごっこ」発売記念。
5月29日(日)
午後1時半から、東京・リブロ 吉祥寺店(吉祥寺パルコ B2F tel: 0422-21-8122)

午後5時から、東京・紀伊国屋書店新宿南店7F特設会場(タカシマヤタイムズスクエア内 tel: 03-5361-3301)

番組(「クボジュンのえいごっこ」)のキャラクター、ポトポトも会場に。

CD付き絵本「クボジュンのえいごっこ」は28日発売。CDには久保が歌う9曲も。1,785円(税込)
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