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和服姿で、日本語歌詞でジャズのスタンダード曲などをうたう異色の歌手、bebeが新作「東京の休日」を出した。8曲入りの小品だが、「太陽がいっぱい」など有名な映画音楽を取り上げ、親しみやすい内容。東京の休日をちょっとオシャレに、少しウキウキに演出する。bebeに話を聞いた。
ENAK登場は2度目になるbebe。やっぱり和服姿で、取材場所に現れた。デビューの際にも紹介したように、有名な外国の歌に自作の日本語歌詞をつけてうたう。今回もその作り方を踏襲。ただ、今回は映画の主題歌・音楽に的を絞った。
テレビドラマ「DOLLHOUSE 特命捜査班」(TBS系)の主題歌としてマリリン・モンローの「愛してほしいのに」をうたったのがきっかけですが、映画好きの兄の影響で、私自身とにかく映画が好きで、高校1年生のころから週に1回は映画館に足を運んでいます。実は、最初は「死霊のはらわた」(1983年)となどのホラー映画が好きだったんですが。ともかく、「愛してほしいのに」を軸に、映画主題歌・音楽をうたってみようと。1950-60年代の映画の音楽に集中した選曲ですが、よい映画音楽にしぼったら自然とそうなってしまったんです。
01)ラズベリーランデヴー
映画「お熱いのがお好き」より『I Wanna be Loved by You』カヴァー
02)春へつづく道
映画「いそしぎ」より『いそしぎ』カヴァー
03)午前8時の配達人(インストゥルメンタル)オリジナル曲
04)プラチナ通り(スキャット)
オリジナル曲
05)待つよい宵
映画「グレン・ミラー物語」より『ムーンライト・セレナーデ』カヴァー
06)緋色(あか)の家
映画「太陽がいっぱい」より『太陽がいっぱい』カヴァー
07)王女の食卓(インストゥルメンタル)オリジナル曲
08)I WANNA BE LOVED BY YOU
DOLL HOUSE
/ボーナストラックヴァージョン
映画「お熱いのがお好き」より『I Wanna be Loved by You』カヴァー/英語歌詞
自分で作った歌詞は、実は映画の内容とは無関係。旋律を聴いて喚起されたイメージだけで世界を作り上げる。その結果、歌は、題名まで変わっている。「愛されたいのに」は「ラズベリーランデブー」に。「太陽がいっぱい」は、「緋色の家」にといった具合だ。

旋律を基に私が映画をもうひとつ作るとしたらどるか。そんなふうにして作りました。たとえば、「ラズベリーランデブー」なら、ミュージカルでポップなフランス映画っぽくて、女の子が彼氏のことを思って家で彼のことについて歌う。ラズベリーランデブー−−これは、ハーブティーの名前なんですが−−とバート・バカラックがあなたのお気に入りでしょ。そんな歌をうたうんです。
「愛されたいのに」は、映画を見ていないけど、旋律の一部は知っているという人が多いうえ、「ププッピ、ドゥー」という印象的なスキャットの部分をもつので、非常に難しかった。結局、「ププッピ、ドゥー」の部分をやめちゃいました。
「緋色の家」は、まさに緋色の家が岸壁に建っている。そこに若い芸術家のカップルが住んでいるんですが、男がダメだから、だんだんと不仲になり、結局、夢を果たせないふたりの物語を、その家がだまって見ている。家が主人公なので「緋色の家」。

装丁の写真は、演出家、蜷川幸雄の娘で写真家、蜷川実花による。鮮烈な桃色は、蜷川のアイデアで、障子に桃色の紙を張った。「東京の休日」という題名は、映画関連ということもあり、「ローマの休日」を拝借した。

bebe 題名も映画っぽくしよう。「東京」という単語は、使いたい。優しそうな感じにするとすれば、「東京の休日」がいいかなと考えました。「休日」という言葉にはウキウキした感じ、優しさがあるでしょ? 前作「bebe」が、自宅でゆっくりとした時間に聴いてほしいという企図の作品だったのですが、今回は外出してルンルンしてみようかという感じですね。ポップな要素が強くて、前回より多彩な内容の歌詞になっていて、短いけど全体にメリハリがある。そういう意味では感情移入しやすい作品になっています。短いからもう1回聴きたくもなるでしょう。この収録時間の短い作品を機に、bebeもうちょっと聴いてみたいな、という気になっていただけるような、入門編のような作品になったのではないでしょうか。

和服が好きだから和服でうたっている。奇をてらっているわけでは、ない。 別にドレスでうたってもかまわないと思っているし、うたいたいなとも思う。だけど、日本語でうたううえで、和服姿というのはひとつの説得力をもつのではと考える。自分で作った日本語の歌詞でうたうのが自分の様式。英語でうたうならほかにもいくらでも歌手はいるので、自分ですべきことではないという。

着物で歌うことで何かを感じてくれる方が多いんです。日本語で歌うことの説得力も着物だからこそある。そうもいえる。日本的な懐かしさ、よさを伝えられるのは着物なのかな。そう。私が書く歌詞の世界を「懐かしい雰囲気が漂っている」といっていただくことがある。たぶん、私が書く風景が昭和っぽいんだと思うんです。たとえば、毎日会う人が同じだとか、歩けば緑がいっぱいあった。私が子供のころにあった風景をイメージして書いているからかもしれません。そのころの生活様式が、一番心地よかった。だから、書いちゃうんでしょうね。

そう、この作品は全体にほんわかとした温かみに満ちていて、なるほど休日気分にぴったりだ。ジャズが基盤になっているが、そういう音楽の分類を気にすることなく、なんとなく聞き覚えのある旋律がほんわかとした歌声でうたわれるのをふんわりとした気分で楽しむのが、正しい聴き方かもしれない。盛りを過ぎたサクラの花がはらはらと散る中で、「東京の休日」を聴こう。