ENAK LONG INTERVIEW VOL.20
俳優
大倉孝二
ビートを意識した演技
誠実に、そしてキッパリと答える。質問されるとじっくりと考えるが、考え込んでしまうわけではない。そのあたり、絶妙の間、リズム感を示す。そもそも演技について現場の状況や構成をリズムでとらえているという。
「音楽でたとえれば、ビートを意識している。全体の構成なら曲になぞらえて考える。音楽の一般的な形式は導入部があり、Ａメロディー(旋律の前段)、Ｂメロディー(次の展開)があってサビ(山場)がくる。ともかく、音楽のようなうねりがあったほうがみる人にもおもしろいと思うんです」
「クリスマス・クリスマス」なら、健太が拉致され連れ込まれた事務所の場面で、その持ち味は発揮される。中央に長机を置いた狭い事務所の空間は舞台さながらで、たじろぐ大倉と協会メンバー数人のやりとりは絶妙。
「長回しのシーンだとか複数の役者がいる場合、みんなが勝手な“音を出したり”、“リズムを出す”と、うまくグルーブ（うねり）にならない場合がある。舞台の出身だからそういうことを思うのかもしれないですが、あの人がワっと出たら俺はちょっと違うトーンで音(芝居)を出す。スピードが速かったら間をとったりとか。せりふの早さなどでビートを刻む。そこに他の役者のせりふがアクセントとして入ってきたらいいな」
なんだか演奏家のようだ。楽譜によらないジャズの演奏家は常に共演者が出してくる音を聴き、それに反応して自分の音を出し、かつ全体の響きにも配慮するものだという。舞台を降りてからも周囲への配慮を忘れない人のようでもある。
「テレビドラマつにいて、役者にとって『ちょっとレベルが低い』というようなことをいう人はいる。でも、僕みたいな“しょうもない”役者は、常に何かをやってなきゃ意味がない。やらせてもらって“なんぼ”なわけですよ。結果も出していないのに、“ぶさいくな”顔して格好つけている場合じゃないですよ。でも、文句はいいますけどね。“文句いい”ですからね！」
広がる活躍の場
これは、ちょっと自分を卑下しすぎていない？ 周囲への配慮のあまり、そんな表現になるのかな？ そんなふうに思っていると「納得いかない？ 嘘ついてると思っている？」と首をかしげ、おどけたようすでこちらの顔をのぞきこんでくる。あ、これもこちらへの配慮？
「基本的にまず、後ろ向きなことを考えてしまう。この性格は、できるなら変えたい。で、さっきの話になるんです。僕になるの、いやでしょ？」
だが、ひかえめに語る言葉の隙間からは、活躍の場が広がることに高まる鼓動も聞こえる。この日は１３社からの取材をこなした。知名度は、着実に上がっている。
「先日、親戚の告別式に参列したら、焼香してる最中にですよ、知らない親戚のおじさんが声をかけてきたんですよ。『あんた。「武蔵」に出てるでしょ？』。おっちゃん、違う、違う。し・ん・せ・ん・ぐ・み！」
顔をしかめ、口に手をそえてひそひそ声でその場を再現する演技に、知らず知らずに引き込まれてしまうのだった。
TEXT BY RYOKO KUBO/久保亮子
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映画「クリスマス・クリスマス」
12月4日から東京・渋谷シネ・アミューズで公開。
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| PROFILE |
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昭和49年7月18日生まれ。東京都出身。
平成7年劇団「ナイロン１００℃」入団。「ウチハソバ ヤジャナイ〜version100℃〜」でデビュー。その後「贋作・桜の 森の満開の下」（野田秀樹/作・演出）、「彦馬がゆく」（三谷幸喜 /作・演出）、「ダブリンの鐘つきカビ人間」（後藤ひろひと／作・ Ｇ2／演出）、「赤鬼」（野田秀樹／作・演出）などに客演。
今年のＮＨＫ大河ドラマ「新選組！」で河合耆三郎役を好演。他、ＴＶドラマも多数出演。映画も「ピンポン」(14年)、「g@me .」(15年)、「ジョゼと虎と魚たち」（同）、「天国の本屋〜恋火」(16年 )、「スゥイングガールズ」（16年）など話題作に多数出演。
初主演作「クリスマス・クリスマス」は１２月４日から東京・渋谷シネ・アミューズで公開。 |
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ナイロン１００℃公式サイト
http://www.sillywalk.com/nylon/ |
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