矢野沙織 LONG*INTERVIEW#2   ENAK TOP PAGE | INTERVIEW INDEX
ENAKパーカー(1920-55年)が残した録音は、時代が古いこともあって、現代っ子の耳で聴けば相当音質が悪かったと思いますが

矢野沙織フォービートジャズを聴くこと自体初めてだったこともあり、録音の古さも含めて新鮮でしたね。それで、またライナーノーツを読むと、アート・ペッパーとかほかのアルトサックス奏者の名前も出てくる。そこで、そういう人たちのCDも聴くようにしました。もちろん、小学生ですから、CDは、まだ買えません。図書館で借りました。

ENAK中学でもブラスバンド部に入ったのですね?

矢野沙織 いえ。中学では部活には参加しませんでした。その…見学にいったのですが、なんというか、一緒には演奏できないかなと…。あの…みんな上手くないなあって…思っちゃったんです。子供のころの私は、ものすごく自己を過信していたんです。

根拠なき自信の中学時代

ENAKはははは、要するにこんなへたくそな人たちと一緒にやってられるか、と。しかし、それじゃあ、ひとりでアルトサックスを吹いていたということ?

矢野沙織そうです。CDを聴いて、それをコピーし続けました。そのほか楽譜も2冊ほど買って練習していました。はい、自宅で、です。マンションなんですが、幸い、となりの家の人も毎日ベースの練習をして、その音がこちらにもれてきていて…。それで、私もいいかなと。いちども苦情はなかったですよ!

ENAKパーカーのCDを聴いて、それをコピーしていたの? ちゃんと、そのとおりに吹けたの?

矢野沙織自分では、だいたいコピーできていると思っていました。

ENAKうーむ。だけど、その演奏を聴いたことがあるのは、自分だけでしょ? つまり、ひとりで練習していると技量の判断に関して客観性はないし…

矢野沙織中学も2年生になるとだんだんと進路について考えなくてはならなくなるんですが、私、本当に、自分に自信があったから、高校なんかいかないで演奏家になるつもりでいたんです。だけど、おっしゃるように、ほかの人に聴かせたことがないな。これはどうなんだろうか、と考え始めていました。ちょうど、そのころ、ビリー・ホリデーの伝記(「奇妙な果実」由井正一、大橋巨泉共訳)を読んでいて、ビリーも14歳で人前でうたい始めたと書いてあったんです。それで、ジャズ雑誌に広告を出しているジャズのライブハウスに片っ端から電話して、出演交渉をしたんです。
ENAKパーカーの次は、ビリー・ホリデー(1915-59年)ですか。パーカーがモダンジャズの始祖なら、ホリデーはジャズボーカルの名花としていまだにその存在は絶対ですね。だけど、ホリデーの伝記なんてもっと大人になってから読んでもいいものですよ。とにもかくにも、ホリデーの伝記、というか彼女の生き方に刺激されて14歳でジャズのライブハウスに出演交渉をしたんですね? 

矢野沙織だけど、やっぱり、相手にしてくれないんですね。もう。かける店も残り少ないというときにかけたのが、東京・西新井のコーヒーとジャズの店「カフェ・クレール」でした。後がないということでねばったせいもあるのでしょうが、「それなら、一度、お店にいらっしゃい」と言われて。両親にうち明けて、ついてきてもらいました。両親には驚かれましたが、ともかくいってみようということになって。マスターが親身になってくれて、飛び入りできるよう計らってくれたんです。それで、月に3−4回はカフェ・クレールで飛び入りで演奏をするようになりました。

14歳でライブハウス出演交渉

ENAKそれまでひとりで練習していただけの少女がジャムセッションに飛び入りなんて…

矢野沙織父の友人でフュージョンのバンド活動をしている方がいて、そこで何度か吹いたことはあったんですが、そもそも私が知っているのは、パーカーの曲を2、3曲でしたから、スタンダード曲を覚えないとだめだよって言われて。楽譜集を購入して、懸命に覚えました。それで、そういうことを勉強する時間を過ごすためにも、とりあえず高校には行っておこうと思って、進学しました。

ENAK高校生になってから、サックス奏者、池田篤に師事したんですよね?

矢野沙織カフェ・クレールで知り合ったサックス奏者、山田穣さんに紹介していただきました。実はその前に、あるジャズ教室に通っていたんですが、そこで教えてくれることは「そんなこと教わらなくてもいいかな」ということばかりで、すぐにやめちゃっていました。池田さんの教え方は、こうしろ、とか、こうしなくてはいけないとかいわない。「いい」とも「悪い」ともいわない。それが、独特で私には合っていた。実は高校生になってからは、自分がリーダーになってカフェ・クレールに出ていたんですけど、池田先生は「お客さんが来てくれるということは、何かいい点があるからだ」といういい方をしていました。「僕のお客さんが、あなたのライブにいったという話は聞かない。だから、あなたのライブにきているのはあなたのお客さんだ」とか。

前に戻る
02
コロムビア
ミュージックエンタテインメント
COCB-53231
¥2,940(tax in)
矢野沙織公式サイト
www.commodojazz.com/
コロムビア 矢野沙織サイト columbia.jp/~yano/