日大芸術学部で映画を勉強していたが、卒業時、映画の大手5社の求人がなかった。
「少しでも関連のあるところへ。運よく宝塚映画にでも入れたら」と、宝塚歌劇団へ就職した。
希望と違う舞台の仕事だったが、「現場が好きで、大道具や照明さんたちとのつながりが楽しかった」と振り返る。植田紳爾(現宝塚歌劇団理事長)をはじめ、日本物を手がける先輩のもとで勉強を重ねた。
「デビューのころは自分の個性を意識して打ちだそうとしていましたが、『個性は自然と出てくるもの』といわれ肩の力が抜けました」
専科の轟悠(とどろき・ゆう)が特別出演し、トップスターの春野寿美礼(はるの・すみれ)と共演する花組「野風の笛」(8月8日−9月14日、東京宝塚劇場)を手がける。父、徳川家康に“鬼っ子”と恐れられ、養子に出された松平忠輝の、波乱の生涯を描く。
「轟は全身全霊をかけてとことん男役をやる。春野は一見、力を抜いたようにすーっと見せるタイプ。互いにないものを持っている。それを刺激しあえば面白いものができると考えた。今の子供たちは人と違うといじめられるというが、自由気ままに人と違う生き方をする素晴らしさと、そういう人をいかすために命をかける男たちの姿を描きたかった」という。
次作は霧矢大夢(きりや・ひろむ)主演のバウ公演「なみだ橋 えがお橋」(9月20−26日、日本青年館)。古典落語の中の身投げ話を題材にした人情喜劇だ。
「舞台美術は橋のたもと。身投げにきては失敗していく人々の物語。落語は、登場する人たちがしたたかに強く生きている。そんな明るい話をつくりたいなあと思っている。霧矢は本当にテクニックがあるので、さらにもう一歩すすんで、こんな霧矢を見たことがないという面を出せる作品に」と話している。
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