花組大劇場公演「野風の笛」「レヴュー誕生」評
轟と春野の顔合わせ魅力十分
宝塚大劇場の花組公演は、専科から特別出演の轟悠と、花組トップの春野寿美礼の顔合わせが最大の魅力。さらに芸達者な専科の立ともみ、汝鳥伶、未沙のえるが加わり、互いのやりとりが味わい深く、観るほどに芝居の醍醐味がある。

慶長グランドロマン「野風の笛」(谷正純脚本・演出)は、隆慶一郎原作『捨て童子・松平忠輝』の舞台化。徳川家康(汝鳥)の六男に生まれながら、“鬼っ子”として捨てられ、数奇な運命をたどる松平忠輝(轟)と、兄弟同然に育った家老の嫡子、花井主水正(春野)を中心に、豊臣秀頼(彩吹真央)、伊達政宗(立)、柳生宗矩(瀬奈じゅん)らが交錯して、ドラマが展開する。

鬼っ子ゆえに自由闊達に生きる忠輝は、時代の異端児。轟は抑えた演技で器の大きさを出し、立ち回りシーンの刀さばきがシャープでかっこいい。対照的に主水正は主君に尽くし、武士道を全うして果てる。その一途さを春野はすがすがしく演じ、切腹シーンは“滅びの美学”で泣かせる。

戦国の世をそれぞれの思惑で生きた男たちの個性が際立つ半面、受動的にならざるを得ない女たちの描き方が簡略。タイトルの「野風の笛」の意味も稀薄でわかりづらい。心に響く品のいい音楽(吉崎憲治作・編曲)、すだれを使った中幕は、日本ものに効果的だ。

グラン・ファンタジー「レヴュー誕生−夢を創る仲間たち−」(小林公平原案、草野旦作・演出)は、宝塚の原点ともいえるパリ・レヴューを、バックステージの人間模様をからませて描いた作品。「白鳥の湖」を黒燕尾で踊る「スワン・レイク」が新鮮で、娘役トップの大劇場お披露目となった、ふづき美世のやわらかな物腰と表情が印象に残った。

2作品ともに、轟と春野の立ち位置や扱い方に、座付き作者ならではの工夫と苦心がありあり。

7月7日まで。

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6月25日(水)大阪朝刊
by
平松澄子
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