音大のピアノ科を卒業し、昭和54年から宝塚歌劇団で稽古(けいこ)場ピアニストをしていた。
「ピアノを弾くのが仕事になればうれしい」と単純な動機だった。その仕事を見て「手伝わへんか?」と声をかけたのが故寺田瀧雄。寺田は「ベルサイユのばら」の主題歌「愛あればこそ」などを作曲した、宝塚を代表する作曲家だ。
「最初は楽譜をコピーしたり、ピアノ伴奏をしたり。仕事は現場で盗めといわれ、手伝い始めたときは、稽古ピアノのほうが自分には向いていると思っていました」と振り返る。
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月組「シニョール・ドン・ファン」の舞台。月組公演は6月27日−8月3日、東京・日比谷の東京宝塚劇場で |
頑張ると決めた3年がたったころ、プログラムに音楽助手として名前が載るようになる。そして、「心の旅路」で主題歌を初めて手がけた。
「稽古ピアノ、助手、作曲を同時にやって大変でした。でも稽古場にいると、演出家のくせや生徒のことも自然と見ることができてよかった」
その後、演出家の小池修一郎から「寺田先生風ではなく、吉田さんの音楽がほしい」といわれ、作曲家に専念する転機になったという。
今年の前半は東京公演だけでも花組、雪組、宙組の芝居と月組の芝居とショーの両方を担当。日本物が多いのも特徴だ。
「日本物の音楽の特色は、洋楽でやることかな。三味線を洋楽器に置き換えるなどします。新しい音楽スタイルで何の決まりもないので、最後はセンスに任されます」
作曲のほかに劇中のBGMの選曲も大事な仕事。月組「シニョール・ドン・ファン」はイタリアが舞台で、音楽にも隠し味がある。
「オペラを流しています。宝塚の舞台には品がなければいけない。作曲する上でも、品を一番に思っています」