娘役トップとして宝塚大劇場でのお披露目となる花組公演が、23日に開幕した。
歴史ロマン「野風の笛」では、専科から特別出演の“トップ・オブ・トップ”轟悠(とどろき・ゆう)が演じる松平忠輝の正妻、五六八(いろは)姫の役。ショーの「レヴュー誕生」では、花組トップの春野寿美礼(すみれ)と、銀橋でデュエットダンスも披露する。
「日本の江戸物のお芝居は初めてです。お姫様の役なので所作などに制約があってとっても難しい。轟さんは立ち回りも踊りもすばらしくきれいで、いろいろアドバイスをいただいています。ショーはほかに『白鳥の湖』のオデット姫で踊るシーンもあって、すごく大変だけれど楽しいです」
娘役らしいやわらかな物腰で、ほわ〜んとしたムードが持ち味だが、稽古が進むにつれてキリッとした顔つきに変わってきた。演出家からも「ふーちゃん、どっかで気を抜かないと体が持たないよ」といわれたそうだ。
「トップになると歌やせりふの量が格段に多くなるし、周りのみなさんの私を見る目も違ってくる。自分の中でもそういう意識を持たないとダメだし、気が抜けないと思っていたんです。でも、どこかでリラックスすることも大切なんだってことも、教えられました」
母親が宝塚ファン。日向薫がトップ時代の星組の地方公演を初めて見て、「こんな世界もあるんだ」と受験を決意。歌やダンスを勉強して、高校卒業後に入団した。
「中学では新体操部の部活動に燃えていたんです。私は体がすごく硬かったんですが、無理やりストレッチを続けたおかげで、ずいぶん柔らかくなりました。今から思うと、それがダンスにすごく役立っているし、私が表現することを始めたルーツだったのかなって」
花組から宙組への組替えでは、大いに刺激を受けたという。
「伝統のある花組と、一番新しい宙組では、雰囲気も考え方も違う感じがしました。新鮮で発見することも多かった。とくに娘役としては、花總(まり=宙組の娘役トップ)さんの集中力、責任感の強さなど、舞台に取り組む姿勢のすばらしさは、見習うところばかりでした」
1年3カ月で再び花組に戻っての娘役トップ昇格。「ただただびっくりして、信じられなかった。本当に私でいいんでしょうかって、プロデューサーに尋ねてしまいました。でも花組だったのでプレッシャーは少なく、自然に入り込めたのはよかったです」
これからの抱負は「自分しか出せない雰囲気を持つ、いろんな色を出せる娘役」で、「次は春野さんとがっちり組むお芝居がしたい」そうだ。
●●●略歴 ふづき美世(ふづき・みよ) 埼玉県出身。平成7年入団。花組に配属され、新人公演の「夜明けの序曲」と「源氏物語 あさきゆめみし」で2度ヒロインをつとめる。13年9月に宙組に組替え。バウホール公演「エイジ・オブ・イノセンス」、大劇場公演「鳳凰伝」などに出演。昨年12月29日付で花組に替わり、トップスター春野寿美礼の相手役に就任。3月の大阪・シアター・ドラマシティ公演「不滅の棘」が娘役トップとしての初舞台だった。宝塚大劇場で公演中の花組「野風の笛」「レヴュー誕生」は7月7日まで。
|