「退団を感じる間もないぐらい、その日その日のスケジュールをこなすことに必死ですね。お稽古中は覚えることがいっぱいで、踊りも想像以上にたっぷりあるので、頭も体もフル回転でした」
来年3月で退団することを8月5日に発表した(関連記事:退団会見)あと、東京と大阪でコンサート「Lica−Rika/L・R」(関連記事:進化し続ける私)を終え、ついにきょう(21日)から宝塚大劇場で、最後の公演となる「薔薇の封印〜ヴァンパイア・レクイエム〜」(小池修一郎作・演出)(関連記事:制作発表)が開幕(12月26日まで)。とても感傷に浸る気分ではないようだ。
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「薔薇の封印」は1本立ての大作だが、永遠の命を持つヴァンパイアのフランシス(紫吹)が、中世の中央ヨーロッパ、17世紀のパリ、ナチス時代のベルリン、現代のバルカンと、4つの時代をめぐるオムニバス形式で描く。
待望のヴァンパイア役が、退団を決断したきっかけに?
「人間じゃない役をやりたかったんですよ。私は2番手のときはオヤ? と思うような変わった役があったんですが、トップになってからは正統派の2枚目が多かったので、そろそろウズウズしていたんです。私1人は一貫した役ですが、周りのみんなは4話でそれぞれ違う役を作る大変さがある。ホントに周りに支えてもらっているありがたさを痛感しますね」
ダンスの得意な紫吹のために、“踊るヴァンパイア”を強調した小池演出とか。
「それはすごいんです。4つの話をほとんど歌とダンスで表現しているようで、振付家の先生がシーン別に6人もいるんですよ。コンテンポラリーの初めて踊る振りもあって、難しい。もちろんフィナーレでも十分踊るので、ショーがなくても満足してもらえると思います」
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宝塚歌劇団は来年で創立90周年を迎えるが、紫吹は70周年に宝塚音楽学校に入学した。足かけ20年の宝塚生活になる。
「最高の時を過ごせた竜宮城だなぁーって思いますね。振り返ればいろんなことがあったけれど、そのどれがなくても今の私はない。全く悔いはありません。最後まで夢を見させてもらって、舞台を楽しみたい。90周年で卒業しますが、少しの時間でもたずさわれるのは幸せです」
気になる退団後は、やはり女優に転身?
「今はまだ、何にも決まってないんですよ。男(役)をやっているほうが長いんだから、女優のお話が来てもどうしようって感じ(22日に帝国劇場の16年7月公演『喝采−愛のボレロ−』に出演と発表)。結婚もご縁があれば、できたら1回ぐらいはと思いますけどねぇ」
何かやってみたいことは?
「ダンスだけは趣味でもレッスンを続けたいですね。それに夢はロンドンに住みたいし、英語がしゃべれるように勉強もしたいと思っています」
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ヴァンパイアではないタカラジェンヌは、ファンに“永遠の記憶”を残して、華やかな花の盛りに去っていく…。
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