宝塚歌劇団専科で次期星組トップスターの香寿たつきがミュージカル『天翔ける風に』で初の外部出演をする。野田秀樹の『贋作・罪と罰』を、演出・振付家の謝珠栄がミュージカル化。男役の香寿が、江戸の男社会を凛(りん)と生きた三条英役で女性役に挑戦する。 舞台は江戸末期。江戸開成所の女塾生・三条英は、「一人の悪人を殺し、万の善人を救う」という理想のもと、金貸しの老女を殺害するが偶然、居合わせた老女の妹まで殺してしまう。担当刑事は次第に英に疑いの目を向け始める。罪の意識に苦悩する英は親友の才谷に真実を告白し…。 謝は「キャリアウーマンの先駆けのような存在。これほどたくさんの偉人が出て、強く変った時代はない。その男社会の中を、ものすごく強い意志で生きぬいた女性。理想を求めて、まっすぐに生きる人たちの姿を現代の若者に見てほしい」と話す。 香寿は「英はすごくパワーがいる役。純粋すぎるほど純粋な人です。女役だからと特別意識はしませんが、普段と違ってキーが高いので声のコントロールに気をつけました。英の気持ちの流れの見せ方が、とくに難しいです」という。 香寿は昭和六十一年宝塚歌劇団入団。花組、雪組、専科を経て、十一月には星組トップのお披露目公演が待っている。その前に外部出演、さらに女役というのは極めて異例のこと。 「宝塚しか知らなかったので、比べようがないほど初めてばかり。男優さんと演技も初めてで、最初はドキドキしていましたが、私は順応しやすいタイプみたい。この経験で宝塚のよさも改めて分かりました。みなさんがいろいろアドバイスしてくださり、作品に取り組む姿勢などたくさん学んでいます」という。 「もともと舞台の男役姿と普段のギャップが大きいタイプですし、宝塚で培った実力がある。現場には、すーっと入っていって、ゆっくり自分のものにしていますよ」と謝。 倉庫を改造したけいこ場、衣装は自分で繕うなど、宝塚とは全く環境は違うが、外部出演を生き生きと楽しんでいる様子。 香寿は「英は人間としても、女性としても目覚めていく。彼女がどう生きて、目覚めた心で何を見つめたか。それをお客さまがどんな風に受け止めてくれるか楽しみです」と張り切っている。 ほかに立川三貴、福井貴一、畠中洋、平沢智らが出演。十七−二十四日、東京・新宿のシアターアプル。問い合わせはTSミュージカルファンデーションTEL03・5738・3567。 田窪桜子@産経新聞文化部
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