月組のトップ、真琴つばさのラストステージでも、それに続いて幕を開けた花組トップ、愛華みれのさよなら公演でもトップ娘役の存在が希薄だ。若い男女が出会い、恋を語るラブストーリーは定番に過ぎて、もはやノスタルジーの世界に押しやられてしまったのだろうか。 ミュージカル「ミケランジェロ〜神になろうとした男」。 結婚することなく、作品が妻だったというイタリア・ルネンサンスの天才の生涯を描くストーリーにラブロマンスは期待できない。それでバチカンのピエタ像(キリストの死を悲しむ聖母マリア像)のモデルが彼の死んだ恋人だったとする作者の、独自のひねりをよりどころに“愛の物語”が構築された。 モデルはミケランジェロ(愛華=写真右)の母親説やメジチ家令嬢・コンテッシーナ(大鳥れい=同左)--とする説を退けて、コンテッシーナの夭折した姉・ルイーザ(渚あき)とし、幻想として登場させることで劇的効果を上げようとしたらしい。 しかし、この設定では、彼に恋する妹・コンテッシーナの片思いのけなげさも伝わってこない。 愛華・大鳥のトップコンビは華やかでアダルトな雰囲気なのに前作「ルートヴィヒII世」でもからむシーンがなく、今回も持ち味が生かされていない。 ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画の再現など、新進の舞台美術家・新宮有紀の見事な装置に圧倒されるが、内容が観客が望む方向からずれている。作・演出は谷正純。 ショー「VIVA!」は幕開きから満艦飾のような色彩が躍動、愛華の持ち味の明るさを弾けさせる。 次期トップの匠ひびきも元気に娘役をリフトして前作で発生した足の故障の回復を証明。 また、星組の娘役トップに昇格する渚も歌唱力で、愛華のさよなら公演に花を添えている。作・演出は三木章雄。八月十三日まで。 斎藤勝行@産経新聞大阪文化部
斎藤勝行@産経新聞大阪文化部