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   雪組トップ、轟悠が専科入り
専科が“第6の公演チーム”に 公演場所や回数の増加もねらい


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 宝塚歌劇団雪組トップスターの轟悠が28日、大阪市北区のホテル阪急インターナショナルで記者会見し、トップを退いた後に同劇団の専科に入る意向を明らかにした。来年1−2月の東京雪組公演『愛 燃える』『Rose Garden』に出演した後、2月12日付で専科に移る。

 轟が入団した昭和60年の同期生は4人が、そろってトップスターに昇り詰め、うちこの7月に月組・真琴つばさが退団。星組・稔幸、花組・愛華みれも退団の予定で、轟の去就が注目されていたが、轟はこの日、「タカラヅカ以外で舞台活動をすることは考えられない」と述べ、トップを退いた後は退団ではなく宝塚の各組の公演に出演する専科に入り、引き続きタカラヅカの舞台を踏む意思を表明した。

 トップの専科入りはこれまでにも春日野八千代や真帆志ぶき、上月晃、鳳蘭、榛名由梨の例がある。

 昨年6月に主役クラスを投入する新専科制度が発足した後は月組の娘役トップ、檀れいに続くものだが、男役では榛名以来、19年ぶりとなるこの轟が初めてであり、異例の異動といえる。

 会見で轟は「退団する意思がありませんでしたので、専科入りのお話があったときは動揺もしましたが、熟考した結果、タカラヅカ全体に貢献できるのなら、雪組トップで収まっているよりも、やりがいがあると考えました」と述べ、トップの立場よりも大きな視野での活動を選択したと説明した。

 記者会見に同席した植田紳爾・歌劇団理事長も「雪組に置いておくだけでは惜しい人材で、タカラヅカの男役の伝統を継承していく意味でも専科でがんばってもらうことにした。今はタカラヅカの男役の象徴として、春日野八千代さんが節目のセレモニーで舞台センターに出てもらっているが、21世紀を迎えてタカラヅカ100年を考えたとき、一体、だれが男役の中の男役として、ファンの皆さまの前に立てるのかと考え、轟に話を持っていった」と、“専科スター”の役割を強調した。

 トップを張ったスターの処遇として「まず、今後1年間は5組に順次出演してもらい、少なくとも1年に1回は主役を張る作品を用意する。タカラヅカの公演マーケットは拡大しており、いつまでも同じことをしていては、チャンスを逸することになる」と、専科の活動の場を広げる方針を明らかにした。

 専科は旧来、ベテランの演技派をプールした組織だったが、人気、実力とも兼ね備えた主役級スターを投入することで、専科単独での公演も視野にいれたものとみられる。轟の加入はいわば“6組目”の公演チームを編成したともいえる強化で、轟を“トップの中のトップ”として、外部にもアピールしていきたいのだろう。

 実際、“6組体制”により宝塚、東京の拠点劇場のレギュラー公演のほか、公演回数増の要望が強い名古屋、福岡の公演も増強できる態勢が整う。

 また、全国ツアー(地方公演)の長期興行や今年、テストケースとして東西のコマ劇場で初めて行ったOGとの合同公演の定期公演化、さらに外部の劇団とジョイントした作品にまで手を広げることも可能で、そうなれば興行収入増がはかれるほか、演劇界での認知度を高める社会的効果も期待できる。

 轟は入団当初から男っぽい雰囲気を持つ二枚目男役の線を守り、男女の性差が薄くなった最近の傾向を反映して中性的な妖精(ようせい)タイプの男役がもてはやされる風潮と一線を画してきた。

 歌唱力と色の濃い役柄を得意にするキャラクターで、まだ、中堅クラスだった平成4年に「忠臣蔵」で堀部安兵衛を好演、さらに「風と共に去りぬ」でレット・バトラーの男臭さを見事に演じて、トップ昇格のレールに乗った。「エリザベート」ではヒロインを暗殺するルキーニの狂気を体全体の漂わす演技力を発揮。その勢いに乗って、9年から雪組トップに就いた。

 昨年のミュージカル「凱旋(がいせん)門」の演技で芸術祭優秀賞を受けるなど、現在のタカラヅカの二枚目男役を代表する存在に成長。



斎藤勝行@産経新聞大阪文化部     


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