トップ交代で活気づくタカラヅカ
花の盛りでリフレッシュ
大阪文化部編集委員 平松澄子@010924東京朝刊 

 宝塚歌劇団は2002年上半期から宙(そら)組を除く花、月、雪、星の4組のトップスターが入れ替わり、新体制でスタートする。トップの退団という話題に加え、新世紀の幕開けとなった今年は、東京宝塚劇場(有楽町)が元日にオープン、10年ぶりの“ベルばら”ブームも重なり、大入り続きだ。「歌舞伎は襲名披露公演、宝塚歌劇はサヨナラ公演で稼ぐ」といわれる演劇界で、タカラヅカのこの勢いは、どこまで続くのだろうか。

 
トップは同期

 宝塚歌劇団は5組あり、劇団員は1組当たり70−80人。組の垣根を越えて活躍する専科(約30人)も合わせると、計約400人になる。その中でトップスターと呼ばれるのは、人気と実力を兼ね備えた主演の男役で、各組に1人ずつ、計5人しかいない。

 現在、本拠地である兵庫県宝塚市の宝塚大劇場では、星組「ベルサイユのばら2001−オスカルとアンドレ編−」が上演中で、トップの稔幸(みのるこう)と相手娘役の星奈優里(ほしなゆり)は千秋楽の10月1日で退団する。

 東京宝塚劇場で9月29日から11月11日まで公演される花組による「ミケランジェロ−神になろうとした男−」「VIVA!」の2本も、トップの愛華(あいか)みれのサヨナラ公演となる。

 2人に先立ち7月2日、月組トップの真琴(まこと)つばさが退団したが、この3人に雪組トップの轟悠(とどろきゆう)を加えた4人は、いずれも昭和60年に初舞台を踏んだ同期生。同時期に同期生のトップが4人もそろうのは、タカラヅカ87年の歴史の中でも初めてだった。

 
新陳代謝

 大ヒット作“ベルばら”の演出家で歌劇団の理事長でもある植田紳爾(しんじ)は「頂点に立った時点で引き際を考えるのがトップの宿命です。ましてや同期生となれば、退団時期が重なることは覚悟していました」と話す。

 トップの在任期間は、近年では2、3年サイクル。トップにのぼりつめるまでには10数年のキャリアが必要で、あまりにも短い「花の盛り」を惜しむ声も多い。しかし、こうした新陳代謝こそが、常にフレッシュであり続けるタカラヅカの原動力になっている。

 同期4人のトップのうち最後の轟は、退団せずに専科入りを決めた。トップの専科入りは榛名由梨(はるなゆり)以来、19年ぶりだ。

 植田は「100周年を考えたとき、シンになる人材がほしい。轟には“宝塚歌劇の顔”となって男役の伝統を極めてもらいたい」と強調する。

 
後任人事

 後任のトップ4人は、月組の紫吹淳(しぶきじゅん)が東京先行のデビュー公演中で、今日24日が千秋楽だ。正式なお披露目は来年1月に宝塚大劇場で公演するブロードウェーミュージカル「ガイズ&ドールズ」になる。次いで、星組が香寿(こうじゅ)たつき、花組が匠(たくみ)ひびき、雪組が絵麻緒(えまお)ゆう−と続く。

 じつはマンネリ打破や新たなフィールドへの挑戦を意図して昨年6月にスタートした新専科制度により、次期トップの人事は注目されたのだが、いずれもこれまで各組の準トップとして活躍し、新制度で専科入りしていた人たちが順当に昇格した。

 いささか拍子抜けの感は否めないが、61年入団の紫吹と香寿、62年入団の匠と絵麻緒と、実績十分の実力派ぞろいである。

 ちなみにトップ・コンビを組む相手娘役は、月組が平成11年入団の映美(えみ)くららで、歴代では黒木瞳に次ぐスピード昇格。対照的に星組の渚(なぎさ)あきは63年入団で、最年長での就任となる。花組は引き続き大鳥(おおとり)れい、雪組は、まだ未定だ。

 
ベルばら人気

 東京宝塚劇場は元日のこけら落とし以来、劇場稼働率100%という、他の劇場では考えられないような高水準をキープしている。それに比べ、宝塚大劇場はここ数年、演目によって90%を切ることもあり、ばらつきが目立っていた。

 ところが、今年3月に「ベルサイユのばら」を星組と宙組が東西同時上演。10年ぶりの再々演だったが、“ベルばら”人気は健在で宝塚大劇場も一気に稼働率100%となり、観客動員数も、過去2回の公演を合わせ、350万人突破が確実視されている。

 さらに来春には、東経110度CSデジタル放送で「宝塚歌劇 衛星放送チャンネル」が開局することも決まった。

 親会社の阪急電鉄社長の大橋太朗は「宝塚歌劇は阪急グループのエンターテインメント・コミュニケーション事業として力を注いでいる。東京での拠点も確立できたので、この夢と感動の世界の魅力を、海外も含めてもっと広げていきたい」といっそうの積極展開を考えているようだ。


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