専科 汐風幸 インタビュー

 01/11/24 産経新聞東京夕刊
 Text By TAKUBO,Oko/田窪桜子@東京文化部



−−『花の業平』で演じている藤原基経は、どんな人物ですか?

実在の人物で、藤原家の中でもさらに権力を高めた人。平安時代という時代性も含め、背景にあるものがとても大きい役で、国をも動かしていくパワーと気迫のある男ですね。妹の高子(たかいこ)を天皇家に嫁がせたいがために、在原業平の高子への愛を断ち切ろうとする。本当に嫌なやつですが、ただ意地悪な役としてとらえてほしくないですね。業平の敵役という存在です。

−−とりあえず悪役ですが、なにかご苦労は?

悪役というのは、実はほとんどやったことがないんです。雪組の『バッカスと呼ばれた男』で演じたマザラン枢機卿も、裏を返せば国のため王妃のための行動でした。でも、基経は藤原家と自分のためでしかない。私が情にもろいタイプなので、ここまで冷徹な男を演じるのは苦労しましたね。今までは舞台にポンと出た瞬間に役に入れたのですが、今回は、気をぐーっと高めてから、舞台に出ていっています。

−−お好きな場面は?

好きな場面は…選びきれないですね。演出の先生に「基経は妖気があり、出てきただけで舞台の空気が変わるような役」と言われたんです。平安時代は、怨霊(おんりょう)や怨念の存在が当たり前だった時代。『基経の念(おも)い』の場面で、「夜な夜な金毛九尾の狐が出るという噂をご存じですか」というせりふがあります。こういうせりふをさりげなく言えて、この時代のリアル感を出せればいいなと思っています。

しおかぜ・こう 昭和63年、『キス・ミー・ケイト』で初舞台。花組に配属。平成2年、新人公演でオスカル役に抜てき。3年、月組に組替え。翌年、バウ公演初主演。10年、『心中・恋の大和路』で亀屋忠兵衛を熱演した。雪組を経て昨年、専科へ。軽妙かつ堅実な演技力で人気の男役スター。

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