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安寿ミラ講座
--やはり、踊る安寿の考察--

 「踊る安寿ミラ」を久しぶりに見て、気分がハイになった。安寿のダンスには、いやしとか爽やかとは違う潔さがある。9月9日に見た、ダンスコンサート『FEMALE vol・4』(東京・品川のアートスフィア)である。関西公演は一昨日の30日まで、兵庫県宝塚市の宝塚バウホールで上演されていた。素晴らしい舞台で、感動した気持ちをすぐ書くつもりだった。が、あのアメリカの同時多発テロ事件が起こってしまい、高揚していた気分が落ち込んで回復を待っていた。今はもう、大丈夫。鮮烈な記憶がよみがえってきて、安寿の花のような肢体が力強くほころびたり、跳ねたりする様子を伝えることができる。

 安寿は自らのダンスを、登山家が山に登るたとえになぞらえて、「ただ好きだから、そこにダンスがあるから踊るのです」と言っている。4回目の今回、前田清美、川崎悦子、ケンジ中尾、福井亜紀と四人の振付家の競作で各シーンを踊る。ベニー・グッドマンからオペラ、シャンソン、タンゴ、宝塚の名曲、そして小田和正など伴奏曲や歌もにぎやかだ。

 黒のパンツ姿で風に舞う軽やかな躍動、パピヨンのイメージで可愛い色気を強調した踊り…、テンポよく続くステージが小気味いいのも、からっとした安寿の性格そのまま。心躍ったのは、共演の女性ダンサーとデュエットした「男と女」のシーン。安寿は白のスーツ姿で男のパートを務めたが、踊るトップスターといわれた宝塚花組時代の男役のダンスでなく、はっきりと女性の情感と官能をたたえながら、そのうえでパートナーの女性ダンサーをきりりとリードする。そこにはダンスを通しての主張がのぞいていて、生を楽しむ闘う姿勢が感じられる。ほとんど女性で占められた客席が、ざわっと揺れる。多分、そこが安寿のダンスの魅力だろう。働く女性へ、強く1人で生きる女性へ、安寿の踊りは勇気を伝える。

 このところ、女優の安寿ばかりと出会っていて、ダンス舞台は、宝塚を退団してまもなくの赤坂BLITZ公演以来。ずいぶん見なかった「踊る安寿」に、改めていい気分にさせられた。10月末には、『カッコーの巣の上を』でハードな芝居に挑む。充実したダンス後の安寿の看護婦役が楽しみになった。

011002@東京夕刊




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