兵庫県宝塚市の宝塚大劇場前の「花のみち」。歌劇の公演が始まる約2時間前。あたりは全国から集まってきた女性たちでいっぱいになり、独特のエネルギーがじわっとたまっていく。
お目当ては、楽屋入りするタカラジェンヌたち。「男役」のスターはとりわけ人気が高い。スラリと伸びた手足に、さっそうとした立ち居振る舞いが周囲の視線を自然と熱くする。舞台の上とはまた違った輝き。ファンにとって、それに触れるのも大切な“儀式”なのだ。
手には色紙と花束、コンパクトカメラ。熱気は高まり、そして一気にはじけ飛ぶ。「来たっ!」。ストロボが光り、歓声が響く。が、その中にあってスターの笑顔はあくまで涼しげ。優雅に手を振って歓声にこたえ、楽屋へ姿を消す。
舞台と街角、非日常と日常の危うい接点。人が夢を追う歌劇の街“タカラヅカ”に朝が来た。