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ENAK流行 9月10日(火)大阪夕刊
大劇場月組公演評
紫吹が悩める外科医を好演

女性が演じる男役が、本来の女の役を演じる切り替えの妙−。宝塚大劇場の月組公演は2本とも、そんな不思議な楽しさがある。

「長い春の果てに」(石田昌也脚本・演出)は、仏映画「世界で一番好きな人」をモチーフにしたロマンチックなミュージカル。

優秀な脳外科医だったステファン(紫吹淳)は、手術中に患者を死なせた心の傷から無為な生活を送っていた。そんな彼にエヴァというピアニスト志望の少女(映美くらら)が強引にまとわりついてくる。脳血管腫を病む彼女はステファンを“シンデレラの王子さま”と思い込み、いちずに慕っていた。「この小さな命を救いたい」と決意したステファンは、脳外科医に復帰して、難しい手術を担当するが…。

おとぎばなしのような恋物語は宝塚歌劇にはよくあるが、外科医と少女というトップ・コンビの役柄は珍しい。ステファンをめぐる女性はほかに、精神科医(汐風幸=専科)と弁護士(大空祐飛)がいて、ともに男役スターが美女の役で好演しているのが新鮮だ。

病院や難病が背景にあり、殺伐としたせりふが多いわりに、暗さも涙も少なくテンポがいいのは石田演出の軽妙さ。ただ、ステファンをめぐる3人の女性のエピソード以外に、男同士の友情や夫婦愛など盛りだくさんで、物語がハイライト的な散漫な印象になった。

「With a Song in my Heart−君が歌、わが心に深く−」(岡田敬二作・演出)はブロードウェーの大作曲家、リチャード・ロジャースの生誕百年を記念したレビュー。何万曲もある楽曲から主に初期の21曲を厳選し、宝塚独自のビジュアルで見せる。「ドレミの歌」「シャル・ウィ・ダンス」など、よく知られた名曲は、フィナーレのメドレーで一気に歌う趣向だ。

いつかどこかで聴いたことのある曲ばかりで心地いいけれど、いささかインパクトに欠ける。その中で女役に変身した紫吹が長い足を披露して、湖月わたる(専科)を相手に踊るシーンが最大の見せ場になっている。

30日まで。


By 平松澄子


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