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ちょうど、この作品の制作発表が昨年の9月12日で、その前日にテロが起きました。直後にこんな作品ができるのかと不安になりましたが、今はやってよかったと思っています。ニューヨークの人々が本来もっている明るさを感じて、表現できることがうれしいし、そんなに簡単に立ち直れるとも思わないのですが、まだ落ちこんでいる方々が、この作品をパワーにして本来の明るさを取り戻せたらと。そう思いながら、毎日公演しております。本来ならあす11日に献歌をすべきで、あしたのほうがもっとリアルに、この作品の歌を歌えるのではないかと思いもします。けれど、きょうも献歌があるということで、いつも以上に思い入れを込めて(テロを取り上げた場面の歌である)「セプテンバー・イレブン」を歌いました。千秋楽まではニューヨークの方々のことを思い浮かべ、パワーを送れるようにせいいっぱい演じていきたいと思っています。新聞社のみなさまも、報道を通じてニューヨークの方々に、このパワーを送ってほしいなと思います。

−−昨年の9月11日、テロを知ったときは

テレビをつけたら、貿易センタービルの映像が映っていて、「あ、すごい映画をこんど作ったんだな」と思いました。事態が分かった後も、涙が出て、鳥肌がたつという恐怖を味わって、こんなことをしてしまうことが信じられない。どちらかといえば私は性善説の立場なので、想像もつかないというのが最初の思いです。テレビで続々と映像を見るうちに、もしも自分があそこにいたらと複雑な気持ちになり、この作品をやるにあたり、この人の気持ちになって明るく演じていこうと思いました。ともかく、最初は信じられない。こんな世の中ならいっそ、人類は滅亡してしまいノアの箱船でもでてきていちからやり直したほうがましではないかと思ってしまった。こんな世の中にいるんだなという悲しみと怒りとを感じました。

−−ニューヨークの振り付け師とはどのような話をしたか

私たちが初めて歌ったときに涙ぐんでらっしゃいました。日本語で歌っているわけですから、歌詞の意味は分からないはずなのに。でも、なにか伝わったようです。でも、「意外とニューヨークの人のほうが前向きだ」といわれて、「あ、そうなんだ」と。被害にあった現場の人たちのほうが元気なんだと、逆に私たちのほうが励まされてしまって、それがこの公演のパワーや明るさになったと思います。

−−ニューヨークでは、ブロードウェーミュージカルを見て人々が立ち直ったといわれていますが、舞台のそういう力について

現実社会で夢がなくなってきており、どこかで必ず殺人事件が起きるような中、いっときでも夢をもてるのが舞台。現代人はあきらめの言葉を先に発するようになっていますが、舞台は希望をもってやっているもの。自分の根底にある夢とか希望とか、これから先の明るい未来みたいなものを与えられるのではないかと思う。私だって落ち込むこともあるけれど、舞台に立つと「こんなばかばかしいことで悩んでいたのか」と感じることがある。舞台ってすごいなと思います。

−−ニューヨークにいく予定は?

時間があれば、いきたいなとは思っていますが、いまはどうでしょう。海外は好きですし、ニューヨークは公演でもプライベートでもいっていますので、必ず、いちどいきたいなと。自分が演じたストーリーの舞台をたどってみたらおもしろいだろうなと思います。


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