産経新聞社

メタボリックシンドローム

生活習慣病の引き金「内臓脂肪」 メタボリックシンドローム 予防を(2−2)

≪良い肥満 悪い肥満≫

 ■体重あっても…皮下なら「問題なし」

 メタボリックシンドロームの元凶である内臓肥満とは、皮下よりも、腸など内臓の周囲に蓄積した状態だ。脂肪が内臓に接しているので肝臓の門脈などから吸収され、脂質の代謝を乱しやすい。

 この様相を世界で初めて、X線により人体を輪切り画像で見られるCT(コンピューター断層撮影法)画像でとらえたのが大阪大学の研究グループ。内臓脂肪が、腹部の中心部に大きく広がって黒い層になっている様子がよく分かる。

 ウエスト周囲径が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上だと、この内臓脂肪が過剰に蓄積されているか判断する目安になる。

 また、阪大グループは体重が重くても健康な肥満の例として力士のCT画像を撮った。こちらは脂肪(黒い部分)が周囲の皮下だけに集まり、見た目のウエストが太くても内臓周囲にはほとんどたまっていない。

 画像提供は、徳永勝人・高槻社会保険健康管理センター長。

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≪対策≫

 ■脂質低い和食を 積極的に運動も

 メタボリックシンドロームの概念を導入した保健指導プログラムにより防げる確度が高まるのは、国民病といわれる生活習慣病。糖尿病や心筋梗塞(こうそく)など罹患(りかん)率が高い病気が含まれている。

 厚生労働省の調査によると、糖尿病の有病者(平成十四年度)は七百四十万人、予備軍は八百八十万人で、あわせて千六百二十万人もが健康を脅かされている。それまでの五年間で一・二倍に増えた。

 このほか、高血圧症の人が三千百万人、血液中の脂肪分含量が多い高脂血症は三千万人もいると推測される。

 さらに脳卒中で亡くなる人は、年間十三万人、心筋梗塞は五万人と多い。

 厚労省は「日本人の健康寿命を延ばしていくためにも、総合的な生活習慣病対策が急務」としている。

 このため、新たな予防の考え方として取り入れられたのがメタボリックシンドロームだ。内臓脂肪の蓄積が万病の元になるので、食べ過ぎを改め、食事内容も脂質の低い和食を増やすといった工夫が必要。

 また、内臓脂肪は、エネルギーとして消費されやすいのでウオーキングなどの運動を積極的に行うことを勧めている。

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≪医療費≫

 ■異常「なし・あり」3倍の格差

 社会保険庁が、政府管掌健康保険加入者のうち、健診受診率の高かった三重県の約二千八百人を対象に、平成五年度の健診結果と十五年度の診療報酬明細書(レセプト)を照合して調査。肥満度▽血圧▽コレステロール▽血糖値−の四項目の健診結果で、すべて異常があった人の十年後の医療費は四五・一万円で、異常ゼロの人の一四・三万円の三倍以上もかかることが分かった。メタボリックシンドロームの診断基準とも重なる四項目はいずれも、食事の改善など生活習慣を改めることで修正が可能で、厚生労働省は「この調査で、生活習慣病を予防すれば医療費が削減できることが裏付けられた」としている。

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 【学会が診断基準】

 ■具体的数値で注意を喚起/総合的視点でリスク把握

 メタボリックシンドロームの考え方は、生活習慣病に対する予防医療の意識改革につながる。脂肪が内臓の周囲に過剰に蓄積すると動脈硬化のリスクを格段に高めることがわかったからだ。内臓肥満というターゲットが絞られたことで、確実に効率的な保健指導プログラムが組め、健康な社会のための新たな対策に取り組めることになる。

 メタボリックシンドロームの考え方は、まず内臓肥満が血圧を高め、血液中に含まれる中性脂肪や糖分の含量を増やす。次いでそれぞれの症状がさほど深刻ではなくとも重なると動脈硬化になる確率が高まり、さらに心筋梗塞や脳卒中に結びついていく。

 もうひとつのルートは脂肪細胞が直接、分泌する「アディポネクチン」というホルモンに関係する。脂肪組織は単なる余ったエネルギーの貯蔵庫ではなく、内分泌臓器の役目も果たしていることが分かった。そこから出される「アディポネクチン」は動脈硬化を修復する善玉なのだが、脂肪細胞が肥満すると、分泌量が減ってしまう。つまり動脈硬化が進行するままになってしまうのだ。

 いずれも過剰な内臓肥満が元凶になっているのだ。

 このような研究成果をもとに、昨年四月に策定された日本独自の診断基準は、日本肥満学会など内科系八学会のコンセンサスが得られたもの。厚生労働省もこの新しい概念を導入した生活習慣病対策を進めつつある。

 診断基準のうち、必須項目に挙げられているのは内臓肥満をチェックするウエスト周囲径。へその位置を測るとよく、男性八五センチ以上、女性九〇センチ以上は内臓に脂肪が断面積で百平方センチ以上たまっている要注意領域に入ったことを示す。

 また、血液中の中性脂肪や糖分の含量、血圧がいずれもやや高め程度の値であっても、このうち二つが該当すれば、相乗して血管を傷めることになる。

 こうしたデータは、通常の定期健康診断などで出される数値であり、これらを総合的な視点で関連付けてみることにより、動脈硬化のリスクの度合いが的確に把握できるようになった。個人にとってもダイエットなどの目標が定まることで生活改善の意思が保てるだろう。

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 【「撲滅委員会」が初会合】

 ■官・学・産など一体で取り組み

 官界、医学会、メディア、産業界が一体となって、生活習慣病の引き金となるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の撲滅運動キャンペーンに取り組むことになり、同撲滅委員会の初会合が二十六日、東京・大手町のサンケイプラザで開かれた。

 会合では、撲滅委員会の委員長を務める日本肥満学会理事長で、住友病院の松澤佑次院長があいさつで「現代人は飽食と車社会の中で必然的に過栄養になり、メタボリックシンドロームに陥りやすい。だが診断基準の策定で生活習慣の改善メリットがある人を分別しやすくなった」と述べ、国民の健康のためメタボリックシンドロームの追放運動を一致協力して展開していくことを呼びかけた。

 来賓として出席した厚生労働省健康局の中島正治局長は「メタボリックシンドロームを生活習慣病対策の基本としていく」と語った。

 この五十年間で糖尿病患者は五十倍に増えたほか、動脈硬化予備軍は二千万人に上るとされ、生活習慣病は社会問題化しており、国家的な対応が急務。撲滅委員会はこうした問題意識に立ち、各界一体となってキャンペーンに取り組むことになった。

 委員会メンバーは、春日雅人・神戸大学医学部付属病院長(日本糖尿病学会理事長)▽北徹・京都大学理事・副学長(日本動脈硬化学会理事長)▽藤田敏郎・東京大学大学院教授(日本高血圧学会理事長)▽齋藤康・千葉大学医学部付属病院長(日本肥満学会副理事長、日本動脈硬化学会副理事長)▽渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長ら。

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 主催 産経新聞社、フジテレビジョン、ニッポン放送、メタボリックシンドローム撲滅委員会

 後援 厚生労働省、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本血栓止血学会、日本心臓病学会、日本臨床内科医会、日本歯科医師会、日本歯科医学会、日本歯周病学会、健康・体力づくり事業財団、日本糖尿病財団、日本心臓財団、日本栄養士会、日本製薬工業協会

 特別協賛 第一生命

 協賛 アステラス製薬、アストラゼネカ、大塚製薬、オムロンヘルスケア、花王、科研製薬、キッセイ薬品工業、協和発酵工業、グラクソ・スミスクライン、サノフィ・アベンティス、三共、サンスター、塩野義製薬、大正製薬、大日本住友製薬、武田薬品工業、日本ベーリンガーインゲルハイム、バイエル薬品、明治乳業(50音順)

(2006/01/27)