産経新聞社

メタボリックシンドローム

医療改革法案を閣議決定

 政府は10日、医療制度改革関連法案を閣議決定し、国会に提出した。伸び続ける医療費を抑制するため、高齢者に応分の負担を求めるほか、入院日数の短縮や生活習慣病予防に積極的に取り組む。政府は今国会で成立させ、早いものは今年10月から実施する考えだ。

【高齢者】

≪75歳以上に独立型健保≫

 高齢者の医療制度は平成二十年度に抜本的に見直される。目玉は七十五歳以上を対象とした独立型の新たな健康保険の創設で、原則として加入者全員から保険料(当初は平均年額六万一千円)を徴収する。

 世代間の不公平感を解消するため、お年寄りの窓口負担率も上げる。現役並み年収のある七十歳以上は現行の二割から現役世代と同じ三割に統一。現役並み年収に満たない七十−七十四歳も一割から二割に引き上げられる。

 長期療養で入院を続けるお年寄りは、食費と部屋代(光熱水費相当分)が自己負担に。厚生労働省が示したモデルによると、相部屋の場合、現在の月額六万四千円が九万四千円になる。

 現役世代を含め、がんなど高額医療費の自己負担限度額も引き上げる。現役世代は月額「定額七万二千三百円に限度額を超えた医療費の1%」から「定額八万百円と1%」に、七十歳以上の一般年収の人は月額四万二百円が四万四千四百円に見直される。

 さまざまな負担増の一方、少子化対策として、乳幼児の窓口負担率を二割とする軽減措置は「三歳未満」から「小学校入学前」に拡大。出産育児一時金は五万円アップし三十五万円となる。

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【入院】

≪「在宅」を充実、退院促す≫

 医療費抑制のため、在宅医療を充実させ、患者の入院日数短縮を目指す。終末期患者を含め、患者が退院しやすくなるよう、地域における医師や看護師、ケアマネジャーなどの連携態勢を整備して退院後も切れ目のない医療サービスの提供を行うほか、患者の容体が急変したときの受け入れ可能な病院との連携を強化する。

 入院ベッド数自体も減らす計画。二十三年度末までに介護保険適用の介護型療養病床十三万床を全廃、医療保険が適用される医療型病床も二十五万床から十五万床に絞り込む。さらに、中長期的な取り組みとして、都道府県ごとに数値目標を盛り込んだ医療計画を策定する。

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【生活習慣病】

≪健診・予防に照準≫

 生活習慣病の温床となる「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)に照準を合わせ、健康管理や病気予防に積極的に取り組む。

 国民健康保険や健康保険組合に対し、これまで任意だった主婦を含む四十歳以上の加入者や扶養家族の健康診断を義務付け、治療が必要な人や予備軍の生活習慣改善を促していく。具体的には、基本的検査として内臓肥満、血圧、コレステロール、血糖値の四項目を実施するほか、肝機能や腎機能検査を加えることも検討している。

 さらに、健診後の保健指導も徹底する。健診結果をもとに、要治療と診断された人には受診を勧奨。予備軍に対しては、食事教室や個別相談、携帯メールなどで生活習慣の改善を促すほか、改善の必要性が高い人には、医師に相談を受けるよう積極支援する。

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≪医療制度改革スケジュール≫

  【平成18年10月】

 ・現役並み年収の70歳以上の患者窓口負担率を2割から3割に引き上げ

 ・長期入院する70歳以上の食費と部屋代(光熱水費相当)を自己負担化

  【20年4月】

 ・70−74歳の患者窓口負担率を1割から2割に引き上げ

 ・乳幼児の窓口負担率2割の対象を、3歳未満から小学校入学前に拡大

 ・保険運営主体の健康診断事業を一部義務化

 ・75歳以上を対象にした健康保険を新設

  【20年10月】

 ・政府管掌健康保険(政管健保)を公法人化

  【24年4月】

 ・介護型療養病床を廃止

(2006/02/11)