増える仕事量…ストレス原因か
減少傾向にあった四十−五十代の男性労働者の高血圧がバブル崩壊後から増加し、なかでも肥満を伴わない五十代の高血圧の増加が目立つことが、大阪府立健康科学センター(大阪市)の調査から分かった。不景気による人員削減の影響などで、精神的なストレスが増加していることがその背景にあるという。(篠田丈晴)
≪50代の3人に1人≫
センターでは、大阪府内の商社や金融、放送など七企業が昭和五十年から平成十六年までの三十年間に実施した社員の定期検診のうち、四十−五十代の男性(延べ六万九千六百七人)の結果について集計・分析した。
それによると、四年に四十代12%、五十代21%だった高血圧者の割合が、十六年では四十代21%、五十代31%に増加していた。また、肥満を伴わない(=BMI〈体重キロ÷身長メートルの2乗〉が25未満)五十代の高血圧の割合が十六年は18%に達し、四年に比べて7ポイント伸び、肥満を伴う高血圧者の伸び3ポイント(10%→13%)を上回っていた。
調査にあたった同センター健康開発部部長の北村明彦医師(予防医学)は、「平成の初めごろまでは肥満の有無に関係なく、高血圧の人の割合は減少傾向にあったが、バブルがはじけ景気が悪くなったころから増加に転じた。私たちは労働環境など社会の変化が背景にあると考えました」と話す。
≪生活環境にも乱れ≫
昨今、生活習慣病対策をめぐっては、内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が引き起こされやすくなる「メタボリックシンドローム」が注目されている。しかし、北村医師らの研究チームは今回の調査から、肥満でもないのに高血圧の人の割合が増えていることに着目した。
「肥満や塩分・アルコールのとり過ぎであれば、生活習慣の改善で血圧を下げられるなどと指導できる。しかし、環境による精神的ストレスが関係している場合などは、生活習慣の指導のみでは血圧が下がりにくい」
平成の初めごろには毎年三千人以上あった受診者数がバブル崩壊後から減少し、十六年には約二千人程度となっており、北村医師らは労働環境の悪化との関連性を疑っている。「例えば、リストラによって人員が削減され、二人で行ってきた仕事を一人で処理しなければならなくなる。肉体的負担だけでなく、心の余裕もなくなり、休む暇もないから交感神経が緊張しっ放しという状態に陥ってしまう」とする。
こうしたストレスのほか、深夜帰りなどで食生活が不規則になることによって血圧が上がる恐れもあるという。
≪しっかり休養を≫
定期健診では医師による診察・問診も行われる。北村医師によれば、最近、肥満ではない高血圧者から仕事上のストレスの悩みを打ち明けられることが増えているという。「私が見る限り、特に金融機関などで働く人に目立ちます。まじめで、きっちりと仕事をこなす人が陥りやすい」
ストレスで高血圧にならないためには、無理せず適度な休養をとることだが、なかなかできない職場も多い。最も大切なのは、経営者や職場の上司の意識改革という。
北村医師は「従業員の立場では、休養を取りたいとは言い出しにくい。雇用者側はストレスと血圧の関係を認識し、精神的な負担を減らす配慮のある職場環境づくりを心掛けてほしい」と促す。
従業員レベルでは「仕事に根を詰めず、しっかり休養を取るようにしてほしい。また減塩を含め、食事のバランスに気をつけ、肥満の人は減量する。さらにアルコールは血圧を上げるので酒を飲む人は節酒を。それでも血圧が下がらない場合は医師に相談する」と北村医師は呼びかけている。
(2006/02/22)