メタボリックシンドローム 患者らに福音
生活習慣病の原因になる「内臓脂肪」から出る神経信号が、食欲を抑制する機能を持っていることが、東北大学の研究グループの研究で分かった。肥満などは、体が本来持つ食欲調節の機能が低下することが原因とされているが、この神経信号を活性化することで食欲抑制ができれば、苦しい「食事制限」から解放される道も開ける。肥満だけでなく、糖尿病などの治療にも効果を発揮しそうだ。
メカニズムを解き明かしたのは、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授、岡芳知教授(いずれも代謝学)らのグループ。実験では、太らせたマウスの内臓脂肪に、脂肪を燃やして代謝を向上させる遺伝子を導入したところ、脳内で食欲抑制ホルモン「レプチン」の働きが活発化して、マウスの食事量が半減した。
遺伝子の働きがどのように脳に伝わったのかを検証するため、一方のマウスだけ、内臓脂肪と脳の視床下部を結ぶ神経を切断したところ、神経を切断したマウスの食欲は減らず、内臓脂肪から出される神経信号が脳に働き、レプチンの働きを活性化させていることをつかんだ。
摂取した炭水化物や脂肪分は体内で余ると、中性脂肪として血液中に流れ、全身の脂肪細胞が吸収する。ある程度たまると、細胞は食欲を抑制するホルモン「レプチン」を血液中に分泌。これが脳の食欲中枢となる視床下部に届き、食欲を抑える。
レプチンは一九九四年、米国の研究機関が発見したが、過食が続くと、レプチンは大量に分泌されているのに、食欲が抑制されなくなる現象があり、その原因は解明されていない。
レプチンは血液を介して脳に作用するが、働きが悪くなったレプチンに神経信号が作用するとなれば、神経信号を活性化する物質を解明すれば「やせ薬」につながる可能性もある。
片桐教授は「レプチン自体は大量に分泌されているので、薬や刺激によって神経を活性化し、視床下部の感受性を高めてやれば、やせる方にハンドルを切る可能性はある」と分析している。
肥満や糖尿病にとって、最も苦しいのが「食事制限」。食欲抑制の神経信号の解明は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の患者らにとっては福音となりそうだ。
(奥村信哉)
(2006/03/22)