産経新聞社

メタボリックシンドローム

【ゆうゆうLife】メタボリックシンドローム 動脈硬化の引き金に

燃えやすく、たまりやすい内臓脂肪 体の仕組みへの理解も必要

 動脈硬化が進むと、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞につながります。働き盛りの男性に多く、その場合、第一線からいきなり離脱することになり、社会的にも問題視されています。そこで動脈硬化のリスクが高い状態を「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)と呼び、多くの企業が予防に取り組んでいます。動脈硬化の引き金となるのが、内臓脂肪の過剰な蓄積です。私たちの体内で、内臓脂肪はどんな働きをしているのでしょう。

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 東京都文京区の会社員、田中浩志さん(56)=仮名=は営業部門で活躍する上級管理職。夜間の会合や接待が多く、不規則な食生活を長年、続けてきたせいか、身長一七二センチ、体重九〇キロで、おなかに脂肪のついた典型的な中年太りの体形をしている。

 田中さんの先輩で、東京都清瀬市に住む元会社役員、青木明さん(59)=仮名=は田中さんの健康を心配し、「内臓脂肪をチェックしよう」と声をかけた。というのも内臓脂肪の蓄積がメタボリックシンドロームの原因とされ、放置すれば心筋梗塞などで倒れかねないからだ。

 内臓脂肪の蓄積を判断する基準はウエストサイズ。男性で八五センチ以上あれば過剰な蓄積の疑いがある。青木さんが田中さんのへそ回りをメジャーで測ったところ、基準値を上回る一〇七センチ。内臓脂肪レベル判定機能のある体重計を使うと、診断基準の「レベル10」をはるかに上回る「20」と出た。

 「メタボリックシンドローム」の診断基準は、内臓脂肪(ウエストサイズ)に加えて、(1)高脂血症(2)高血圧(3)高血糖のうち、二つを満たした場合。降圧剤を常用するほど血圧の強い田中さんは、メタボリックシンドローム“疑惑”が強い。青木さんは「倒れて後遺症が出ると職場復帰に時間がかかるが、死ぬケースは少ないから」と慰めたが、測定結果にショックを受けた田中さんは「おれはダメなのか…」と座り込んでしまった。

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 青木さん自身、二年前まで高血圧、高脂血症、高尿酸値で三種類の薬を常用していたが、一念発起して一年で十七キロのダイエットに成功。いまでは健康そのもので、起業に向けて準備を進める。田中さんにも「いまなら大丈夫。内臓脂肪はすぐ減らせるから」と食生活の改善と運動を勧めた。

 内臓脂肪は食べ過ぎや緑黄色野菜の不足でたまりやすい。アルコールは脂肪に変わりやすいので、飲み過ぎは禁物。田中さんのように夜の会合が多い人は、食生活にも注意が必要だ。田中さんはまずウオーキングを始めることにした。

 脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪があり、動脈硬化予防のターゲットは内臓脂肪。太っていても内臓脂肪型でなければ、あまり問題は起こらない。例えば力士は腹部をCT(コンピューター断層撮影法)で調べると、内臓脂肪はほとんどないという。

 一方、内臓脂肪の蓄積は、生活習慣の改善で予防できる。しかも青木さんの言うように、内臓脂肪は皮下脂肪よりも減らしやすいのだ。

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 脂肪細胞の役割の一つは、食べたエネルギーを中性脂肪の形で備蓄する貯蔵庫だ。皮下脂肪が定期預金なら、内臓脂肪は普通預金。短期で使うエネルギーで、皮下脂肪に比べると燃えやすく、たまりやすい。しかし空腹時間が短くなると、使う機会がなくなった内臓脂肪は備蓄されていく。

 「進化の歴史において、現代は脂肪の蓄積と燃焼のバランスが崩れた状態。日常生活の中でも、運動不足が確実に進む環境になっている。例えば携帯電話。公衆電話を探したり、加入電話まで歩いたりする必要がなくなった。一回だと運動不足を感じないが、一年分が集積すると大きい」と松澤佑次・住友病院院長は話す。

 脂肪細胞は、エネルギー貯蔵庫として人間を飢餓から守ってきただけでなく、体内の機能をコントロールする生理活性物質「アディポサイトカイン」を分泌していることが近年、分かってきた。この物質には悪玉と善玉があり、内臓脂肪が過剰に蓄積されると、悪玉が増える一方で、善玉は減ってしまう。

 食べ物があふれる現代社会では、空腹でなくても、食べる機会は多い。生活習慣の改善が必要だと分かっていても、病気予防の動機付けにならなかった。メタボリックシンドロームのリスクを理解するには、こうした体の仕組みを知ることも大切だ。

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 ■Sさん…不規則でも運動でサイズ維持/Jさん…基準大幅に上回り危険性あり

 メタボリックシンドロームの診断基準の必須項目はウエストサイズ。一月二十六日付「へそ回りで計測、定期的にチェック」で、測定した三人の産経新聞の男性社員のうち、基準値の八五センチを上回ったのは、Sデスク(43)と、見た目も丸々と太った社員のJさん(26)。生活改善の励みに、ウエストの変化を記録した。

 スタート時、Sデスクは八六センチで基準を少し超えただけだが、Jさんは一二七センチ。

 Sデスクは身長一六五センチ、体重六八キロと小太り。二月に担当が「ゆうゆうLife」面から社会面に変わり、四日に一度は宿直勤務のある不規則な生活となった。しかし、できるだけエレベーターを使わず、階段を上り下りするなど運動を心がけたのが良かったのか、ウエストサイズは変化していない。

 一方、Jさんは身長一七七センチで体重一一三キロ。月一回の登山を欠かさない活動的な生活なのに、体重は増える一方だ。二泊三日で趣味のスキーに出掛けた後、体重は変わらないのにウエストが一二七センチから一一八センチに一気にダウン。しかし木曜に職場の歓送迎会があり、過剰な飲食の結果、二センチ増えてしまった。

 「鍋料理とビール二杯、ワイン一杯、日本酒コップ三杯、ゆずサワー六杯。二次会ではピザ二枚とワイン四杯。反省して、日曜に食事を制限したら一一八センチに戻りました。まだ若いから内臓脂肪ではなく、皮下脂肪でしょう。動脈硬化になるには早い」とJさん。

 楽観的なJさんの自覚を促すため、内臓脂肪レベル判定機能のある体重計に乗ってもらったところ、「22」と表示された。

 この体重計は、腹部CTスキャン画像の内臓脂肪面積の大小を三十段階にレベル化した数値(メーカー独自の推定式を用いて算出)が表示される。レベルの判定は「標準・1−9」「やや高い・10−14」「高い・15以上」。「レベル10」が、メタボリックシンドロームの診断基準に相当する。

 「10」を超すと危険性が高まるが、Jさんは大幅に上回ったため、医師の診断を受けることにした。

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 「ゆうゆうLife」では今後も随時、メタボリックシンドロームの診断方法や生活改善の取り組み方などを紹介していきます。

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(2006/03/30)