生活習慣病対策に専門チーム
病気予防といっても、なかなか一筋縄ではいきません。かかりつけ医に生活習慣病の危険性を指摘され、「少しやせましょう」「歩きましょう」と言われても、その場限りになりがちです。生活習慣病はとくに、習慣の積み重ねで起きるため、短期間での是正は困難です。こうしたことに危機感を抱き、仙台市では生活習慣の改善を専門的に指導する医療チームが活躍を始めました。(柳原一哉)
「このままだと脳梗塞(こうそく)が再発しますよ」
仙台市の会社員、大村紀夫さん(55)=仮名=が東北労災病院勤労者予防医療センター(仙台市)を訪れたところ、大村さんはすでにメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に陥っていた。身長一六五センチ、体重七一・二キロと肥満のうえ、高血圧と高脂血も。センターの医師、宗像正徳・相談指導部長の言葉は厳しかった。
大村さんは十六年前に脳梗塞で倒れた。一命をとりとめたが、内臓脂肪症候群は動脈硬化を悪化させ、再発を招く。予防のため、生活改善が急がれていた。
実は、大村さんのセンター行きを勧めたのは、かかりつけの病院だ。センターには生活指導の専門チームがあり、病院に代わって指導をしてくれるからだ。
「また倒れます」。宗像医師の“宣告”に、大村さんは「分かりました」と深くうなずく。早速、医師、看護師、管理栄養士、理学療法士のチーム指導が始まった。
アンケート調査などの結果、まず、改善が促されたのは食事。朝食は週二回だけ。昼はインスタントラーメン。夕食はアルコールとおかずのみで、お世辞にもバランスがとれた食事とはいえなかったためだ。
「缶ビールは一日一本まで。休肝日を週二回つくる」「一日三食のリズムに戻して」…と食事改善を重点化。計画に取り組んだ大村さんの体重は二カ月後、約五キロ減少。揺り戻しもあったが、血液データには効果が表れた。
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この「病診連携」がセンターと宮城県内の開業医・病院の間で始まったのは昨年十一月。
高血圧症や高脂血症、痛風などの生活習慣病の治療は、投薬よりも生活改善で効果が上がる。遠回りのようで、実は近道なのだが、宗像医師は「開業医らの間でこの指導が徹底しない面があった」と打ち明ける。
理由は、患者が実践できない▽外来患者が多く、説明する時間がない−などの事情があるようだ。開業医が指導すれば、高報酬の「生活習慣病管理料(旧生活習慣病指導管理料)」が算定できるが、患者負担が重くなるため、開業医は算定をためらいがちだ。県医師会を対象に昨年夏行ったアンケートでも、「生活指導の専門施設があれば、患者を紹介する」と答えた医師は少なくなかった。開業医らが生活指導に困難を感じていることが見て取れる。
このため、開業医に代わり、ノウハウを持つセンターが生活指導を行う病診連携が始まった。予防医療での病診連携は全国にも例がない。
受診者はセンター開設以来、約百人。八割は院内の患者で、二割が紹介。「今後、紹介がもっと増える」とみる。これまでのところ、全体の三分の一が「5%以上の体重減少」を達成。だが、「体重減少が5%未満」と「体重がまったく減らない」グループも三分の一ずつに上るため、「このグループにどんな指導を行い、改善に導くかが、カギだ」と宗像医師はいう。
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こうした事業が生まれているのは、次世代の医療の姿がおぼろげながら見えてきたからだ。
国は平成十四年に健康増進法で「国民は自らの健康状態を自覚し健康増進に努める」と定めた。二十年度から国民健康保険や健康保険組合などに、現在は任意の健康診断を、四十歳以上の加入者や扶養家族全員に義務付ける方針だ。健診で危険度が高いと判明したら、病気予防に努めてもらう。中長期的な医療費の抑制につなげることが主眼だ。
仙台市も国保加入者の病気予防に向けた保健指導に取り組むことになる。このため、同市健康増進課は「センターの新事業を参考にしたい」と、熱い視線を注ぐ。
この機運をとらえ、全国の労災病院は近く、センターを要に、数千の症例と指導データを基に、指導をどう向上させるかの研究に取り組む予定だ。
宗像医師は「生活習慣病の原因は本人の生活にある。本人の責任が問われるということは、いずれ治療は自己負担で、となる。病気は自分で制御し、自分で治す、そうした自己責任時代に入ったのではないか」と話している。
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あすは、このような生活・運動指導の場に参入した民間企業の現場を訪ねます。
(2006/04/25)