産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康らいふ】メタボリックシンドローム リスク高める高血圧症(2−2)

米国高血圧学会元会長 セオドア・W・クルツ氏
「ピーパーガンマ」の働きに注目

 高血圧症に絡むメタボリックシンドロームの遺伝子レベルでの研究が注目されている。米国高血圧学会の元会長で心血管・代謝系疾患の分子生物学の立場から研究に取り組んでいるカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校研究所のセオドア・W・クルツ教授に、その最新情報などを聞いた。

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 過去十年の研究でわかってきたことですが、高血圧というのは、血圧が高いだけではない。高血圧の患者には、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、そして高血圧が組み合わさった状態をしばしば目にします。こうした複数のリスクファクターを併せ持ち、心臓病や糖尿病になりやすい状態をメタボリックシンドロームと言います。

 米国では、一般人口の10−25%に認められ、さらに高血圧の患者となると、50%がメタボリックシンドロームに罹患しているともいわれています。高血圧症の患者がメタボリックシンドロームを合併すると、心血管病による死亡が二−四倍、2型糖尿病を発症するリスクが五−九倍にもなります。

 米国のメタボリックシンドロームの定義では、高血圧、高血糖、高脂血症、低HDL(善玉コレステロール)血症、そして腹部肥満(ウエスト周囲径男性一〇二センチ)の基準のうち三つ以上なくてはいけないが、それぞれ各国の病態の分布状況や人種差などを考慮して特徴づけていると理解しています。

 診断基準にもある通り、高血圧は、そういうさまざまな代謝異常と大いに関係しているが、必ずしも効果的な治療が施されているとはいえないようです。降圧剤の中には、利尿薬、β−ブロッカーがありますが、これらの薬剤を投与する際には、糖や脂質の代謝に悪影響を及ぼさないように気をつけなければいけません。大半の患者にとっては、運動などで減量することが第一の治療法ですが、そういうアドバイスを実行するのはなかなか難しい。そこで薬剤療法の降圧剤でも、血圧の上昇を抑えるだけでなく、こうした代謝異常もうまく制御できないかと関心も高まり、欧米では、VALUE試験など複数の大規模な臨床試験も行われてきたわけです。

 その結果、種々の降圧剤の中でも、特にレニン・アンジオテンシン系を阻害する降圧剤(ARB)が、糖尿病の新規発症を抑えることが可能な薬物とわかったのです。つまりARBには、インスリン抵抗性を抑制することで抗糖尿病の効果があるということです。

 脂肪細胞から分泌されるさまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)の異常によって、レニン・アンジオテンシン系が活性化し、インスリン抵抗性が高まるというシステムは知られているが、その一方で、細胞の核の中に存在し、糖や脂質代謝をつかさどる遺伝子の発現をコントロールするレセプター(受容体)「ピーパーガンマ(PPARγ)」の働きもわかってきた。つまり、ピーパーガンマが脂肪細胞を活性化すると、肥大化した内臓脂肪を減らしたり、インスリン抵抗性にもいい影響を及ぼすことが認識され始めたのです。代謝異常にも有効なARBの中でも、「テルミサルタン(成分名)」は、それらに加えて、脂肪細胞内のピーパーガンマを活性化する作用を持っていることが実験結果でも明らかになった。ピーパーガンマを治療の標的にすれば、より一層メタボリックシンドロームの改善につながるかもしれません。実は最近、このテルミサルタンの化学構造が、従来2型糖尿病の治療薬として使われている薬剤と似ていることに気が付いたわけです。テルミサルタンは脂肪に溶け込みやすい、その独特の性質から、ピーパーガンマにアクセスする能力も高いと判断されるわけで、内臓脂肪を減少させる実験データも出ています。

 高血圧症をはじめとして、これからの動脈硬化や心血管疾患の予防、治療には、一連の糖・脂質代謝異常を視野に入れて、もっと早期に総合的な医療を推し進める必要があるでしょう。糖尿病の発症を予防しておかないと実にやっかいなことになるのです。遺伝子レベルで解明が進むピーパーガンマが、メタボリックシンドロームを伴う高血圧症患者にも、キーポイントになるのではないか。

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 ■「撲滅運動キャンペーン」に取り組んでいます

 産経新聞社では、官界、メディア、医学界、産業界が一体となった「メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーン」に取り組んでいます。詳しくはメタボリックシンドローム撲滅委員会専用ホームページ(www.metabolic-sankei.jp)に掲載されています。

 【主催】メタボリックシンドローム撲滅委員会、産経新聞社、フジテレビジョン、ニッポン放送、フジサンケイビジネスアイ

 【後援】厚生労働省、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本血栓止血学会、日本心臓病学会、日本臨床内科医会、日本歯科医師会、日本歯科医学会、日本歯周病学会、健康・体力づくり事業財団、日本糖尿病財団、日本心臓財団、日本栄養士会、日本製薬工業協会

 【メタボリックシンドローム撲滅委員会】◇委員長 松澤佑次・住友病院院長(日本肥満学会理事長)◇委員 春日雅人・神戸大学医学部付属病院長(日本糖尿病学会理事長)、藤田敏郎・東京大学大学院教授(日本高血圧学会理事長)、北徹・京都大学理事・副学長(日本動脈硬化学会理事長)、齋藤康・千葉大学医学部付属病院長(日本肥満学会副理事長、日本動脈硬化学会副理事長)、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長

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 ご意見・お問い合わせ等は、郵便もしくはFAXで。《〒100−8079 産経新聞メタボリックシンドローム撲滅実行委員会事務局》(FAX03・3243・1800)まで。

(2006/04/30)