健康守る自覚必要 先を見通した生活設計を
「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」は心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などのリスクが高い状態です。厚生労働省の調査では、四十歳以上の男性では二人に一人が該当者とその予備軍。人ごとではありません。医学界だけでなく、民間企業も啓発活動に取り組み、食生活の改善と運動不足の解消による予防を呼びかけています。
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「最近、話題のメタボリックシンドローム。あなたは大丈夫ですか?」
オフィスや家庭を定期的に訪れる生命保険会社の営業職員たちと、顧客との会話でよく話題になるテーマは「健康」だ。
こうした機会にメタボリックシンドロームの予防を呼びかけようと、「第一生命」は今週から、啓発用のチラシ「生涯設計ジャーナル」を営業職員約四万五千人を通して配布する。
第一弾は、危険度を自分で確認できるチェックシート。「塩辛い味つけが好き」「朝ごはんを食べない」「一日の歩数は一万歩未満」−など、食生活や運動習慣についての質問をチェックして、当てはまる項目が多いほど危険度が高いという内容で、百万枚を印刷した。
「乳がんの早期発見の大切さを伝えるピンクリボン運動でも生涯設計ジャーナルを配布し、現場から共感していただいたという声が上がっています。メタボリックシンドロームは人ごとではないと知ってもらい、健康は自分で守るという意識が広がるとうれしい」と同社生涯設計推進部の永谷和司・課長補佐。
今年はメタボリックシンドロームをテーマにしたシリーズを五、六種類発行する予定だ。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪の過剰な蓄積がもとで動脈硬化のリスクが高まっている状態。腹囲(へそ回り)が男性八五センチ以上、女性九〇センチ以上を必須条件に、(1)血中脂質(2)血圧(3)血糖−のうち、二項目が基準に当てはまれば、メタボリックシンドロームと診断される。放置すれば動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気の引き金となる。
厚生労働省の調査では、四十−七十四歳でメタボリックシンドロームかその予備軍の人は推計約千九百六十万人。男性では二人に一人、女性の五人に一人が該当し、国民の間に広がっていることが分かった。
これまで生活習慣病の予防として、バランスのよい食生活や運動不足の解消が呼びかけられてきたが、危険性の認識が薄いまま、軽視されてきた。長年の生活習慣を改めるには、医療現場の努力だけでなく、改善に取り組む本人の自覚が必要だ。
放置して心筋梗塞などで倒れると、命を取り留めても、回復に時間がかかれば、老後の生活は大きく変わる。身体機能だけでなく、経済面の負担も大きくなる。
国立健康・栄養研究所の渡邊昌・理事長は「メタボリックシンドロームを放置すると、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の患者が増え、医療費が莫大(ばくだい)な額になり、財政が破綻(はたん)しかねない。適切な生活習慣を維持すれば、生活の質の向上につながるという事実を、広く伝えることが重要だ」と、医療費の問題を財政と自己負担の両方の視点から指摘する。
例えば糖尿病患者に使用するインスリンは、糖尿病の程度にもよるが年間三百万円かかる。自己負担を三割とすると、年に約百万円を払わなければならず、患者自身にも経済的な負担が大きい。合併症が進めば、腎不全や失明、壊疽(えそ)などを起こして体が不自由になる場合もある。
生活習慣病は二十−三十年たたなければ結果が分からないので、働き盛りの間は大きな問題は起きなくても、定年退職後に収入が減ったころに、医療費が増える可能性もある。
「自分の健康は自分で守るという自覚をもたなければならない。それにはまず、サラリーマンなら自分の老後を医療費も含めて設計してみる。そして、きちんとした食生活を子供に伝えているか、海外に食糧を依存している状況でいつまで飽食が続けられるかを考え、将来を見通せれば、自覚は生まれるはず」
渡邊理事長は、本人の自覚の重要性をこう強調している。
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【メタボリックシンドロームの診断基準】
(1)ウエスト周囲径(必須項目)
・男性85センチ以上
・女性90せんち以上
(2)以下のうち2項目が該当
・血液中の中性脂肪が150mg/dlかHDL(善玉)コレステロールが40mg/dl未満
・血圧が高め(上・130mmHg以上、下・85mmHg以上)
・空腹時の血糖値が高め(110mg/dl以上)
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≪本社・Jさん“追跡リポート”≫
■血圧記録、生活改善に効果
「メタボリックシンドロームという診断になります」
四月二十七日付「高血圧に赤信号、降圧剤は必須」で、加藤内科クリニック(東京都葛飾区)で検査を受けた産経新聞社員のJさん(26)は加藤光敏院長から、こう告げられた。
Jさんは腹囲が一一七センチもあり、降圧剤を服用するほど血圧が高い。検査結果は中性脂肪が一六六、空腹時血糖が一二一で、いずれもメタボリックシンドロームの診断基準を超えていた。そして食後血糖を調べるブドウ糖負荷試験の結果、インスリンの効きが悪くなって起こる「高インスリン血症」であることも分かった。
インスリンとは、血糖を下げるホルモンのこと。インスリンの分泌が少ないか、効きが悪くて血糖値が異常に高くなるのが糖尿病だ。Jさんの場合はインスリンを過剰に分泌していた。
「この状態が何年、続いていたか分かりませんが、まだ膵臓(すいぞう)が頑張ってインスリンを出していますね。モーターが焼ききれる寸前の状態です。幸い糖尿病ではなく、その予備軍の境界型です」と加藤院長。
「現状のままだと三−四年で糖尿病になる可能性があります。インスリン抵抗性が高いので動脈硬化も進みます」と診断は続くが、Jさんはいまのところ糖尿病ではないと分かってホッとした表情。
「食事の見直しを中心に、激しい運動よりはウオーキングを始めてはどうですか。食事に食物繊維や野菜を増やして、ゆっくりと食べましょう」との指導を受け、血圧を毎日記録するための手帳をもらった。
「まだ二十六歳。糖尿病にはなりたくない」。Jさんは生活を改めようと決意し、診断後の四月二十四日から一日一時間のウオーキングを始めた。これまで食べなかった朝食を毎日とり、野菜をたくさん食べるように心がける一方、大好きな大盛りカレーの早食い競争や間食をやめた。以前はほとんど毎日、約一升飲んでいたアルコール類もやめた。
効果は、まず血圧に表れた。上一六〇、下九〇だった血圧が五月十二日には上一三〇、下八二まで下がった。体重は三キロ減っただけだが、腰回りがすっきりしたのは見た目にも明らか。
「血圧を記録したのが励みになりました。記録を見ると、例えば職場の飲み会で酒を飲んだ翌日に血圧がグッと上がっているのが分かるので、翌日から控えるなど、自分がどうすべきか判断できるようになりました」とJさん。
四月末に二泊三日で友人たちとスキーに出掛けたときは、友人の看護師に間食と飲酒を制限されたため、血圧が一気に下がった。劇的な改善を遂げたJさんは、その後も自分で血圧を測って記録を続けている。
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「ゆうゆうLife」では今後も随時、メタボリックシンドロームについて紹介していきます。
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http://www.metabolic-sankei.jp/
※Sankei Webからも入れます。
(2006/05/25)