肝臓に脂肪がたまり過ぎると、全身の脂肪細胞に「危険信号」を発信し、肥満や糖尿病になるのを食い止めている−。東北大学大学院医学系研究科の片桐秀樹教授、岡芳知教授(代謝学)らの研究チームが、肝臓がセンサーと発信源となる肥満防止メカニズムを突き止めた。
これを利用すれば「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の改善や治療にもつながると期待される成果だ。16日発行の米科学誌「サイエンス」に発表した。
片桐教授らは、遺伝子操作で肝臓の脂肪を過剰に蓄積するようにしたマウスについて、肥満や基礎代謝などの経過を観察。その結果、1週間後には約2倍に肥大した脂肪肝になったが、全身の脂肪組織が縮小。特に精巣付近にある脂肪の塊(精巣上体脂肪)は約半分になった。また、基礎代謝が実験前の1・3倍に向上し、インシュリン抵抗性が上昇し血糖値が低下するなど、糖尿病に改善傾向がみられた。
研究チームは、肝臓が脂肪の過剰蓄積を感知すると、脳を経由して全身の脂肪組織に情報が伝達されていると推測。情報が伝わる神経経路を遮断したラットでは基礎代謝や糖尿病症状の改善も見られなくなることから、「肝臓を起点に、脳を経由して情報を伝える神経のネットワークで、肥満を防止している」(片桐教授)と結論づけた。
肝臓がカロリーのセンサーとして働き、基礎代謝を調節する機能は、これまで全く知られていなかった発見だ。今後は、研究チームが突き止めた神経ネットワークに作用する肥満解消薬の開発などが期待される。片桐教授は「食事・運動療法以外に肥満・糖尿病治療の道が開けることの意義は大きい」と話している。
(2006/06/16)