聖マリアンナ医科大学予防医学教室・吉田勝美教授
健康診断 事後指導徹底へ転換
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予備軍対策が進められる中で、健診後の「事後指導」が大きなテーマとなりつつある。日本総合健診医学会の副理事長で予防医学に詳しい聖マリアンナ医科大学予防医学教室の吉田勝美教授に、その問題点などを聞いた。
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健診というと、以前は結核対策でしたね。早期発見、早期治療が社会的なメリットになって、その延長で、老人保健法による健診が十数年前にスタートしたわけです。しかし、生活習慣病となると、別に病人を見つけるのではなくて、血圧や血糖値、コレステロールが高めの人を早く発見して、ひいては病気にかからないようにすること。それが予防医学の目標ともなるわけです。
そういう流れの中で、生活習慣病のひとつの目玉として現れたのがメタボリックシンドローム。放置すれば、非常に重症化する半面、事前に介入すれば改善効果も見えやすいという点で、新たな健診のターゲットの病態にしようという戦略は、当然の発想だとも思います。従来、健診をやるだけではだめですよというのがわれわれの主張で、事後指導をきっちりしない健診だったら役にも立たない。
事後指導あっての健診。何が優れた事後指導といえるのか。第一に、保健師によって、偏った生活習慣を是正する保健指導をする。あるいは、管理栄養士がその人なりの適切な食生活を考えて提案するなり、指導する。しかし現実には、治療の現場と違って、手術なり薬などのはっきりしたエビデンス(証拠)があって施すのでもなく、受け手からみれば、いまひとつインパクトに乏しいのが現状です。
そこでわれわれが注目しているのが、特定保健用食品(以降、特保)です。食品に分類されてはいるが、エビデンスがはっきりしていて、安全性も確保されている。その人なりの人間栄養学や予防医学に基づいて、健診の事後指導にも、特保を使った積極的介入を行うべきだと思います。
特保を活用することによって、やはり自分が生活習慣に気をつけなければいけないという「動機付け」にもなるし、介入効果も高い。予防医学の現実的な武器として使うべきだろうと私は提唱したい。
予防医療について、もうひとつ考えなければいけないテーマは、リスク・コミュニケーション。例えば、コレステロールが300mg/dlになって初めて治療するのと、それ以前に介入するのとでは、将来のアウトカム(成果)が全然違うのだという情報をきちんと一般の方に提供することが重要です。
リスク・コミュニケーションというのは、リスクがあることをただ伝えるのでなく、それぞれ個々人の立場に立って、置かれている状況を定量的にも理解できて、リスクを回避するにはどうしたらいいか、受け手も納得できる意思疎通のことを言います。臨床でいうインフォームド・コンセントのことですが、健診も数値上のことで終わってはいけないわけです。
生活習慣の中で、“望ましい食事”を取る必要があるとわかっていても、なかなかできないのが現状ですが、それを支援できるのが特保でもある。全体的に身体の代謝の悪化だと判断できれば、血圧、高脂血症、血糖にそれぞれに対応するような特保群をそろえているメーカーもありますし、「リマインド(思いだし)機能」といって、例えば、朝、血糖値の高い人は、食物繊維に含まれる難消化性デキストリンを主成分とする特保を継続的に活用したりすることで、その日1日、食事に注意しようという有効な手段でもあるのです。
今、厚生労働省は平成20年度を目指して、健康診断の見直しを図っています。従来の健診項目を増やそうとする姿勢から、必要な人に適切な事後指導を徹底するという方針に転換しています。特保の適切な運用とともに、リスク・コミュニケーションをキーワードに質の高い事後指導を作っていってほしいのですね。
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【プロフィル】吉田勝美
よしだ・かつみ 慶應義塾大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了後、助手。米国NIH客員研究員。慶應義塾大学医学部助教授などを経て現職。日本公衆衛生学会評議員など。
(2006/06/23)