産経新聞社

メタボリックシンドローム

【飽食社会への警告】第3部(2)藤田敏郎・日本高血圧学会理事長に聞く

高血圧予防へ減塩

 脳卒中などにつながる高血圧は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準に盛り込まれるほど強い関連が指摘されている。日本高血圧学会理事長の藤田敏郎東京大学大学院医学系研究科教授は「生活習慣の変化で軽症の高血圧や高血糖などが合併する複合型が増えており、予防のために減塩や菜食が必要」と指摘した。

 −−「高血圧」はどのような病気ですか

 全国に約3500万人の患者がいるといわれる。血圧が140mmHg/90mmHg以上だと「高血圧」と診断する。このような患者は心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリスクが高くなることが疫学研究で分かっており、治療が必要だ。

 −−わが国の高血圧に関する研究の歴史は

 戦後すぐのころから高血圧が原因で起きる脳卒中が、国民の主な死因のひとつとしてクローズアップされていた。高血圧研究は脳卒中対策の面があり、九州大学研究グループが全町民を継続的に調べている有名な「久山町研究」もそうだ。

 −−高血圧の原因は

 戦後間もないころの秋田県では、成人が食事から摂取する塩分量は1日約30グラム。現在の全国平均の2・4倍以上だ。漬物などの食事に塩分が多量に含まれ、過剰摂取につながっていた。これが原因で高血圧になり脳卒中が多かった。しかし、その後の減塩運動で脳卒中を減らすことができた。

 −−塩分のとり過ぎで、なぜ高血圧に

 そのメカニズムはまだよく解明されていない。ただ現在の平均摂取量の12・3グラムから2、3グラム減らせば、もっと日本人の高血圧は減るだろう。

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 ■軽症も油断できない複合型 

 −−メタボリックシンドロームの診断条件のひとつは「血圧が高め」と比較的軽いのですが

 130mmHg/85mmHg以上を条件としており、いわゆる「高血圧」といえない軽症だ。しかし内臓脂肪型肥満に加えて高めの血糖値、脂質代謝異常が合併すると、それぞれが軽症であっても、脳卒中につながる動脈硬化を引き起こすリスクが高まる。

 −−そうした複合型が増えてきているのですか

 この20年ぐらいで複合型が増えてきた。このことは戦後、一般的になった食事の欧米化やエネルギーの過剰摂取、運動不足の増加という生活習慣のあり方と並行している。9割近くが生活習慣に原因がある。

 −−内臓脂肪型肥満だと血圧はなぜ高くなるのでしょう

 脂肪細胞はエネルギーをためるだけではなく、さまざまなホルモンを分泌する。肥満によって脂肪細胞が肥大化すると、血圧上昇に関係するホルモンが産生・分泌される。これが高血圧に関与しているのではないかと考えられている。

 −−遺伝的に高血圧になりやすい人もいますか

 父母が高血圧だとその子が高血圧になりやすい。非常に高い遺伝率だ。こうした人は早くから注意したほうがいいでしょう。家族歴はメタボリックシンドロームの診断基準には入っていないが、重要な要素だ。

 −−今後、メタボリックシンドロームを予防するための対策は

 内臓脂肪型肥満の解消だ。何よりもいいのが運動。第2に食事の改善。カロリー制限に加えて、塩分を減らすことも含まれる。緑黄色野菜などからとれるカリウムは血圧を下げるので、これも必要でしょう。

 −−その際に注意すべきことはありますか

 無理な運動は避ける。高齢者がいきなり運動をがんばってもひざを痛め、逆に運動できなくなることもある。食事のほうは、塩味を減らすと味気がなくなり、1カ月ぐらいはがんばれても、その後は続かないのでは意味がない。レモン味にしてみるなど工夫しながら長続きする食事の改善がいいでしょう。

(2006/07/05)