産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康】患者向けフリーマガジン 医療の知識もっと手軽に

 病院で患者向けのフリーマガジンが配られ始めている。病気をわかりやすく解説し、「インフォームドコンセント」(告知と同意)を進める観点からも、患者に医療の基礎知識の普及がはかれると評判がいい。ただし、原則的に広告媒体であるため、情報が偏る可能性もあり、利用には注意が必要だ。(山口暢彦)

≪医師との溝埋める≫

 無料情報誌の編集を手がける「ロハスメディア」(東京)が出している患者向け月刊フリーマガジン「ロハス・メディカル」は、昨年9月に発刊、毎月10万部出ている。東京大学医学部付属病院など首都圏の医療機関約80カ所の診察室の前などに置かれている。

 インフルエンザや高血圧、糖尿病など主要な病気を特集し、その症状や治療の方法をわかりやすく解説。診療報酬や介護保険といったわかりづらい医療制度についても、かみくだいて説明している。

 記事は各分野の第一人者といわれる医師らが監修する。「内容の正確さには自信がある」と、同社代表の川口恭(やすし)さん。患者向けフリーマガジンを始めたきっかけは、知人の医師のこんな言葉だったという。

 「最近、医師と患者の関係がギスギスしている」

 忙しい医師は患者をたくさん抱え、一人一人とじっくり向き合う時間がない。その結果、医療に関する説明を十分にできず、患者側は「あの先生は冷たい」などと誤解してしまう。こんなことから、医師と患者の間に感情の溝が生まれてしまうという。

 「限られた(診察)時間を患者さんが有効に使うためには、病気の基礎知識ぐらいは知っておくことが大切ではないか。その知識を、気軽に手に取れるフリーマガジンで提供できればと思った」と川口さん。そうすれば、病気そのものについての初歩的な質問に時間を費やすことなく、より深く、より上手に質問できるようになると川口さんは考えている。

≪待ち時間を有効に≫

 健康サービス業「オアシス」(愛知)が出している月刊フリーマガジン「元気読本」は平成16年9月に発行、北海道から沖縄まで全国約1000の医療機関に置かれている。

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や生活習慣病など、読者の健康志向に応えるテーマの読み物が中心だ。「長い待ち時間を有効に使ってもらおうと思い、患者サービスの一環として発刊した。専門的な内容にまでは踏み込んでいない」と、同社経営企画室の舛渕麻衣子さん。

 同社はさらに今年3月、読者から「元気読本」に寄せられた病院や医師への不満、意見を特集した医師向けフリーマガジン「メディカル・レピオス」を発刊した。「患者の声を医師にフィードバックすることで両者の意思疎通が図られれば」と舛渕さんは話している。

≪情報偏る可能性も≫

 病院で配られるフリーマガジンについて、「元気読本」に記事を書いているフリージャーナリストの伊藤公一さんは、「情報が(総花的でなく)特化しているので、効率よく知識を得られる」と、そのメリットを評価する。

 また、健康志向の風潮が続いていることから、「今後、患者向けフリーマガジンは増える可能性がある」と予測。それだけに、「情報のすべてが正しいわけではないと判断できる目が大切」と指摘する。

 フリーマガジンはそもそも、関連業界からの広告料で成り立っているメディア。それだけに、「(記事にみせかけながらも実は)怪しげな商品情報にすぎないものもあるし、ただの広告カタログのようなフリーマガジンも出てくるだろう。簡単に手に入る情報だが気軽に信じるのではなく、注意することが必要」と呼びかけている。

(2006/07/05)