1年かけ体重5%減量を
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、腸など内臓に蓄積した脂肪がもとになって、高血圧、高血糖などを起こし、動脈硬化につながる。日本肥満学会副理事長の齋藤康・千葉大学医学部付属病院長は、「再び太ることがないように無理せず1年かけて体重を5%減らせばよい」と努力目標を示した。
−−肥満はどのようにとらえられてきましたか
治療が必要な病気としての肥満と、そうでない肥満があり、この2つを分けて考える必要がある。ただ平安時代の絵巻物「病草子」には、肥満の女性が両側から抱きかかえられる姿が描かれており、昔から肥満はよくないと指摘されていた。
−−病気ではない、良い肥満とは
病院の外来にやってくる若い女性に多いのですが、検査しても何も病気が出てこない。これは若い女性の場合、内臓脂肪が蓄積されにくいためで、少し太っていても病気ではないことが多い。
−−それでは、病気になる悪い肥満とは
同じように太っていても脂肪の分布に違いがあり、その違いと病気との関連を調べる研究が進んできた。皮下、内臓、臀部(でんぶ)と調べていくと、中でも内臓に蓄積した脂肪が引き起こしているのは、動脈硬化につながる病気の高血圧、糖尿病、高脂血症などがある。メタボリックシンドロームの診断基準では内臓脂肪を重視している。
原因は、過食と運動不足。余剰のエネルギーに匹敵するエネルギーを消費すればよく、1日1万歩の歩行などが有効だが、なかなかできない。この結果、内臓脂肪型肥満になる。
−−内臓脂肪型肥満の問題点は
このタイプの肥満に病気が多いことが、臨床の観察などから分かっている。健康診断などでCT(コンピューター断層撮影法)により肥満の人を調べ、内臓脂肪型と皮下脂肪型に分ける。すると内臓脂肪型では、糖尿病や高血圧などの合併症を持つ人が92%に上るのに、皮下型の人は60%だった。メタボリックシンドロームの必須条件を満たすだけでなく、睡眠時無呼吸症候群や腎臓病、脂肪肝なども引き起こす危険性がある。
−−エネルギーを過剰摂取すると、なぜ皮下ではなく内臓に脂肪がたまるのですか
そこが最大のポイントだ。いま世界的に研究されているが、どのようなメカニズムなのかストーリーが描けていない。ある研究では、治療で副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンを摂取させたとき、内臓脂肪がたまりやすくなるという観察結果があった。ステロイドホルモンにより、結果として脂肪のつき方が変わったのだ。
男女差もある。内臓脂肪がたまりやすいのは男性の場合、30歳過ぎからだが、女性はおおむね閉経期以後。つまり性ホルモンの違いが関係しているといわれている。
−−内臓脂肪型肥満はどのように解消すればいいのですか
再び太ってこないような適切な体重を、食事療法と運動療法でつくることが治療だ。1週間で体重を減らすのではなく、エネルギーをきちんと保持しながら、適切な体重を長期に維持できるような生活パターンを作り上げること。まず体重の5%を1年かけて減らす。1年で生活パターンを是正し、その結果として体重5%減という状態を目指す。言い換えると生活リズムを1年かけて会得するということだ。
−−何が生活リズムを崩させるのでしょう
食文化が崩れているためだ。座って食卓を囲み時間をかける日本の食事は肥満を防ぐ食べ方ですが、いまどれだけの人が行っているか疑問だ。食文化の崩壊と、戦後の肥満の増加は並行している。肥満の問題が食文化とあわせて議論されるようになってくると本物の肥満予防につながるだろう。
(2006/07/08)