産経新聞社

メタボリックシンドローム

【飽食社会への警告】第4部(2)メタボリックシンドローム海外事情

 ■肥満原因の糖尿病増加

 世界的な規模で広がっている肥満の予防や治療の対策はどうすればよいのか。このテーマは、オーストラリア・シドニーで開かれた第10回国際肥満学会の大きな課題だった。これまで肥満者の減少について際立った成果を上げた国はなく、次世代の健康も脅かしかねないからだ。

 開催国のオーストラリアは米国に次いで肥満者の率が高い。政府は世界に先駆けて1億2000万豪ドル(約100億円)を投じ、健康キャンペーンに乗り出すなどのプログラムを進めている。それだけに学会の運営にも力が入る。

 学会の展示会場にはダイエット食品、糖尿病薬など製薬企業のブースが並ぶ。その中で同国のブースには、政府が積極的に取り組んでいるダイエットや運動プログラムのパンフレット類、CD―ROMなどの資料がうずたかく積まれ、係員がていねいに説明しながら配布していた。

 しかし会場近くにあるシドニー最大の歓楽地、ダーリングハーバーには豪州産牛肉、ロブスターなど特産の食材が味わえる料理店が集まり、ワイン、ビールもふんだんにある。1皿の量が日本のレストランの2倍。健康食品としてブームのスシ(すし)バーでも、料理の脇にたっぷりとマヨネーズが盛ってあった。文化である食習慣を肥満解消の方向に変えるのはかなり困難であることがうかがえる。

 「オーストラリアは肥満に対して大規模な研究報告を行った最初の国です。おそらく肥満が大きな問題であることを早期に気づいたのでしょう」。学会の主要メンバーで、政府の肥満対策プログラム作りのリーダーであるイアン・ケイターソン・シドニー大学教授は力を込めて語る。「ただ、どの国もまだ実績がない。例外は、ダイエットに励む日本の女性でしょう」

 オーストラリア政府の「国民健康調査」(2004年―5年)によると、過体重を含む肥満者は成人男性の62%、女性の45%。10年前に比べると10ポイント近く増加した。さらに問題なのは、肥満を自覚しているのが男女とも3分の1程度にすぎず、健康を気遣う人が少ないことだ。

 「実際、肥満対策はまだ始めたばかりで、ちょうどいま関心を集めている段階です。大切なことは、まだまだ進んでいない肥満の予防や治療について何ができるか国民に知らせること。新聞社やテレビ局とも連携し、知識を広めたい」

 たとえば、こんな風に知識を提供する。「極端にやせる必要はなく、体重を5〜10%落とせば、健康に関して非常に良いことがある」。目標に届きやすいように条件を設定することで、動機付けしやすくするのだ。

 「実は私もこの方法で体重を6キロ落とすことができました。ゴールは8キロなので、あともう少しがんばればいい。血圧が上がったのが原因で減量をはじめましたが、1キロ減らすたびにみるみる血圧が下がっていく。家族性の糖尿病の場合でも、体重を4〜5キロ減らせば、病気が発症する可能性は60%も減ります」

 実際、同国では、肥満などが原因で発症する「2型糖尿病」が増えている。国際糖尿病協会(本部・メルボルン)の調査(2004年―5年)によると、国民の7%に「2型糖尿病」の兆候がある。毎年10万人が新たに糖尿病を発症。肥満関連の医療費は年間4億6000万豪ドル(約400億円)に上る。このデータだけでも抜本的な対策が急務であることがわかる。

 そのひとつが、次世代を担う子供に焦点をあてた取り組みだった。(飽食社会取材班)

(2006/09/30)