産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康らいふ】『歩いて防ごう!メタボリック』(2−1)

 □「働き盛りの健康づくり『歩いて防ごう!メタボリック』INお台場」≪特別セミナー≫

 ■動脈硬化予防に重要な概念

 官界、医学界、メディア、産業界が一体となって対策を進めるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)撲滅委員会のオフィシャルイベント、「働き盛りの健康づくり『歩いて防ごう!メタボリック』INお台場」の一環として医療関係者向けの≪特別セミナー≫が10月7日午後、フジテレビ本社(東京・お台場)で開かれ、約300人が詰めかけた。第1部は、第10回国際肥満学会のヴィレンドルフ賞を受賞した松澤佑次・住友病院院長(日本肥満学会理事長)と春日雅人・神戸大学付属病院長(日本糖尿病学会理事長)の特別対談が行われ、肥満のリスクや予防などを語り合った。第2部は、産業医の視点から、日立健康管理センターの中川徹・医長の講演があり、CTスキャンを使った社員の健康管理法を披露し、注目を浴びた。

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 ≪特別対談≫

 住友病院院長    松澤佑次氏

 神戸大学付属病院長 春日雅人氏

       司会・吹田明日香

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 ■松澤氏…「内臓脂肪」有効な診断基準

 −−メタボリックシンドロームの診断基準の策定から1年半がたち、かなり浸透してきたようです

 松澤 昨年4月、内科系の8学会のコンセンサスを得て、メタボリックシンドロームという動脈硬化性疾患のハイリスク症候群の定義と診断基準を発表しました。

 内臓脂肪をベースに、マルチプルリスク、つまり高血糖、脂質異常、高血圧が1人の人に複数重なっている状態が動脈硬化性疾患の基礎になっているということを認識していただくものです。

 その内臓脂肪のマーカーとしてはCT(コンピューター断層撮影)を必須としないで、それの代用として腹囲を測ることとしています。

 これまでは糖尿病、高脂血症、高血圧の一つ一つに対し治療が行われ、薬が重なって使われることが課題でした。メタボリックシンドロームは、何も腹囲の基準を超えた人全部が病気というわけではなくて、内臓脂肪の蓄積と2つ以上のリスクが重なっていることを診断基準にしています。

 厚生労働省によると、メタボリックシンドロームの発生頻度は男性が4人に1人、女性で9人に1人。この頻度は、日本での血管病などの男女の頻度と比べてもおかしなものではなく、非常にリーズナブルな診断基準だったのではないかと考えます。

 −−肥満に伴う糖尿病は多いのですが、メタボリックシンドロームと糖尿病との関連についてはいかがでしょうか

 春日 糖尿病の診断は一般的に、空腹時血糖値で126、糖負荷試験で血糖値が200という両方を満たした場合に糖尿病型と診断。これが2回以上あると糖尿病と診断します。

 メタボリックシンドロームでは耐糖能異常の診断は、空腹時血糖値が110。ですから、糖尿病とメタボリックシンドロームは非常に密接な関係だが、全く同じではありません。

 問題となるのは肥満です。過食、高脂肪食、運動不足で肥満が生じ、内臓に脂肪が蓄積すると、脂肪細胞からいろいろな物質が出るということが現在では分かっています。それがインスリン抵抗性を介し糖尿病などを引き起こします。

 糖尿病患者のうちメタボリックシンドローム該当者はどのくらいいるのでしょうか。神戸大学付属病院の内科の患者142人について調べてみました。

 メタボリックシンドロームの診断基準で、2型の糖尿病の患者さんの男性が大体46%。つまり半数近くがメタボリックシンドロームを合併していた。女性は大体40%程度で合併しているとの成績を得ました。

 ですから糖尿病とメタボリックシンドロームの患者さんは重複するが、全く同一ではないことが分かりました。

 メタボリックシンドロームの概念が重要だと思いますのは血管の合併症の観点からです。最近のいろいろな成績では、動脈硬化の進展は実は、糖尿病と診断される以前、すなわち血糖値が126になる前、100とか110ぐらいの境界領域の時からすでに始まっていることが分かってきました。

 従って糖尿病と診断される以前から動脈硬化の予防ということを心がけなければいけない。そのときにメタボリックシンドロームという概念が非常に重要だろうと思っております。

 −−国際的な動向について

 松澤 アメリカの場合、5年ごとの統計で見ると、BMI30以上の頻度はどんどん増えていっている。押しとどめることがなかなか難しいというのが今の欧米、オーストラリアなどの現状です。

 以前は、特殊な治療法などを開発し、高度な肥満対策をしようとしていました。外科治療で胃を小さくしたり…。そうした対策だけでは無理なので、メタボリックシンドロームの診断基準を欧米でも策定している。

 逆に言えば、日本では高度の肥満者が極めて少ないわけですから、対策を今からやればアウトカムが非常に出やすいのではないでしょうか。

 −−予防についてアドバイスがあればお願いします

 ■春日氏…「糖尿病境界型」も引き金

 春日 申し上げたいのは、糖尿病と診断される以前の境界型のレベルでも動脈硬化の重要な引き金になるという点を、よく認識していただきたい。

 境界型の場合には全く症状はなく、ご自分は逆に非常に体調はいいと考えていらっしゃる方が多い。このときにメタボリックシンドロームの診断基準に照らし問題があれば何年か先の動脈硬化を防ぐ点から、医師のみならず、コメディカルの方にもぜひ積極的に指導していただきたい。

 松澤 好都合なことに内臓脂肪というのは、たまりやすいが、減りやすいという性質があります。診断基準に照らし、内臓脂肪型肥満の人を選び出すということは、生活習慣の改善に対してのレスポンスが非常にいい人を選び出していることにつながります。

 こうした人を対象に、平成20年度から健診の実施など本格的な健康管理が進んでいきますが、ぜひご支援をいただきたいと思っております。

(2006/11/10)