■月内に研究会、活用を模索
日本海沿岸に大量に流れ着き、漁業に被害を与えるエチゼンクラゲ。その栄養成分に着目し、家庭料理の食材として普及させるための研究会が今月中に発足する。体内に含まれる糖タンパク質を病気の診断薬向けに精製する研究も本格化。大量廃棄される「海の厄介者」を有効活用する試みが模索されている。
エチゼンクラゲは傘の直径が約1メートルにもなる巨大クラゲ。近年、夏から秋にかけ、本州の日本海沿岸を中心に大量に漂着するようになった。定置網が破られたり、流されたりと深刻な被害が相次ぎ、漁業関係者を悩ませている。食用に加工するにも大きな設備投資がかかり、これまで相手にされていなかった。
こうした中、独立行政法人「水産大学校」(山口県下関市)の上野俊士郎教授(浮遊生物学)は「大量に家庭で消費され、資源生物になれば、駆除の問題は解決し、漁業関係者が利益を生み出すことも可能」と考え、研究会を設立して新たな食材としての可能性を探ることにした。
研究会にはクラゲの飼育種類数で世界一を誇り、エチゼンクラゲ料理をすでにレストランで提供している加茂水族館(山形県鶴岡市)や、京都府立海洋センター(京都府宮津市)などが参加。全国各地のクラゲ研究団体が家庭料理への利用策を検討する。
上野教授によると、エチゼンクラゲは水分が多く、においが強いが、低カロリーで美肌効果があるとされるコラーゲンを含む。血圧を下げる効果もあるため、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策にも有効で、「まさに現代人向けの健康食材」という。
日本に漂着するのは年間約5億匹といわれ、加工すれば食用部分の総量は約100万トン。中国料理の食材として輸入されているクラゲ加工品の約100倍の量という。
研究会では今後3年間かけ、一般家庭の食卓にどんなクラゲ料理が並んでいるかをマーケティング調査。日本人向けの料理法や流通経路の研究を進める。
上野教授は「将来的には消費者にも研究会に入ってもらい、アイデアを出し合ってエチゼンクラゲのマイナスイメージを払拭(ふっしょく)したい」と話す。
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一方、福井県立大食品化学研究室の吉中礼二教授らのグループは、病気の診断薬などに使われる糖タンパク質の一種「レクチン」を、エチゼンクラゲから精製する方法を開発した。
レクチンは、がんや白血病などの診断薬や研究用試薬として医療、化学分野で用いられる。多くの動植物から精製されるが、生物によって性質に違いがあり、同研究室によると、大豆由来で1ミリグラム当たり3000円、カブトガニ由来で同4万3000円という高価格で販売される。
同研究室は、エチゼンクラゲの抽出物から独自の方法でレクチンを取り出し精製。他の生物由来のレクチンと比べて独特の構造と分かり、試薬としての価値も期待できるという。
エチゼンクラゲは1キロ当たりレクチン約30ミリグラムを含むといい、単純計算だと50キロの小型クラゲ1匹でも450万円相当の試薬を生む。ただ、商品化するには、精製するレクチンの純度を高める必要があり、この課題を3月までに解決して特許出願を目指す考えだ。
(2007/01/08)