産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康らいふ】メタボリックシンドローム 歯周病(2−2)

 ■内臓肥満で高まるリスク

 ■歯科と内科 連携して新治療法の構築必要

 −−そのメカニズムとは

 日本人の糖尿病患者では「2型糖尿病」が大部分を占めていますが、その病気が高脂肪食などの脂質異常や高血糖、肥満などから、糖ホルモン「インスリン」の分泌や抵抗性(効き具合)の調節が取れなくなって、やがて発症することはよく知られています。一方、(内臓の)脂肪細胞からは、「アディポサイトカイン」と総称される炎症性の生理活性物質などが多く産生・分泌されており、動脈硬化にも影響しています。歯周炎でも同種の生理活性物質の存在が明らかになっています。糖尿病状態だと、絶えず生理活性物質の一つである「TNF−α」などのサイトカインが産出しており、それらが慢性化すると歯周組織を破壊して歯周病を悪化させます。そうしたサイトカインなどによる組織破壊のメカニズムが、糖尿病と非常によく似ていることから、血液を介して何らかの相関関係があるのではないかと、研究が進められているところなのです。

 −−肥満、メタボリックシンドロームとの関係は

 肥満との関係は、日本の疫学研究でも確かめられています。九州大学の研究グループが肥満と歯周病の程度を調べたところ、「BMI(肥満指数)」30以上の人は20未満を1とすると、8・6倍にも歯周病罹患(りかん)率が高まることがわかりました。肥満では、米国の若い年齢層でも強く相関関係があることが、米国国民健康栄養調査でも報告されています。

 −−心筋梗塞(こうそく)などの心臓血管疾患にも関係しているとか

 米国の複数の疫学研究から、歯周炎の影響が心臓血管系にも波及する可能性が報告されています。6〜8年の長期臨床試験で歯周炎のある人とそうでない人とでは、心臓血管疾患を発症するリスクが20〜180%高いという報告が出されています。従って、歯周炎と心臓血管疾患は相関関係にあり、歯周炎がひどいほど心臓血管疾患の発症が高まる可能性が指摘され始めています。そのメカニズムとして、米国での心臓疾患患者からは、歯周病細菌特有の嫌気性菌「p・G菌(P・gingivalis)」が見つかっているのです。これはすごいことなのですね。

 −−その細菌は、動脈壁にできるアテローム(粥(じゅく)状)性の動脈硬化症で見つかっているのですね

 そもそもアテローム性の動脈硬化は、炎症性のあるところの血管壁が膨らんで血管が詰まってくるわけですから、その可能性があるわけです。p・G菌は、ほとんどの重症の歯周病患者さんから見いだせるのです。−−そのほかにも

 低体重児早産も歯周病の炎症の状態が影響して、子宮の筋の収縮を引き起こす可能性が報告されています。(女性の)閉経前・閉経後の歯周病患者対象の調査では、骨粗鬆症が重症化するに従い、歯周病が悪化するし、ラット実験でも骨粗鬆症を起こすタイプは、歯周病が起きやすいことが報告されています。

 −−まさに、生活習慣病ですね

 実は、「健康日本21」ではすでに、歯科の中で唯一、歯周病が「生活習慣病の一つ」と規定されているのです。歯周病もまた、メタボリックシンドロームの一環、基礎疾患という位置づけで取り組まねばと思っています。これからは歯周病の分野では、医科と連携して新たな歯科医療を築いていく必要があります。

 −−その歯周病が、増え続けている

 確かに、中高年を中心に罹患率は増える一方で、恐らく国民の80%以上の人が何らかの形の歯周病にかかっています。その半面、受診率は20%以下といわれています。残りの大半が歯周病を放置していることになります。今でも歯を失う最大の原因が歯周病で、きちっと歯周病を治して歯を残しておくことが健康の秘訣(ひけつ)です。口腔が健康なら、全身の健康にもつながっていくことなのですね。

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【プロフィル】野口俊英

 のぐち・としひで 東京医科歯科大学歯学部卒業。同大助教授を経て、昭和62年、愛知学院大学歯学部教授。日本歯周病学会理事長、日本歯科医学会理事、日本学術会議連携委員など。

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 ■「撲滅運動キャンペーン」に取り組んでいます

 産経新聞社では、「メタボリックシンドローム撲滅のためのキャンペーン」に取り組んでいます。詳しくは、メタボリックシンドローム撲滅委員会専用ホームページ(http://www.metabolic−syndrome.net/)に掲載されています。

 【主催】メタボリックシンドローム撲滅委員会、産経新聞社、フジテレビジョン、ニッポン放送、フジサンケイ ビジネスアイ

 【後援】厚生労働省、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本血栓止血学会、日本心臓病学会、日本医師会、日本臨床内科医会、日本歯科医学会、日本歯科医師会、日本歯周病学会、日本抗加齢医学会、日本CT検診学会、日本健康運動士会、健康・体力づくり事業財団、日本糖尿病財団、日本心臓財団、日本栄養士会、日本薬剤師会、日本フィットネス産業協会、日本製薬工業協会、サンケイリビング新聞社、扶桑社

 【協力】リビングプロシード

 【メタボリックシンドローム撲滅委員会】◇委員長 松澤佑次・住友病院院長(日本肥満学会理事長)◇委員 春日雅人・神戸大学医学部付属病院長(日本糖尿病学会理事長)、藤田敏郎・東京大学大学院教授(日本高血圧学会前理事長)、北徹・京都大学理事・副学長(日本動脈硬化学会理事長)、齋藤康・千葉大学医学部付属病院長(日本肥満学会副理事長、日本動脈硬化学会副理事長)、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長

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 ご意見・お問い合わせ・情報等は、郵便もしくはFAXで。《〒100−8079 産経新聞メタボリックシンドローム撲滅実行委員会事務局》(FAX03・3243・1800)まで。

(2007/02/12)