■韓国、国家レベルの対策
韓国人といえば、韓流スターの影響か、スマートな男女をイメージする。韓国式のダイエット法も日本で人気を呼んでいる。ところが、実際は「日本と同様、少子化による人口減の問題と並んで、深刻な肥満の増加が20〜30年後には韓国の経済に大きな損失を与える」と学者らが口をそろえる。
ソウル市で開かれた「アジアオセアニア肥満学会議」は、韓国にとっても肥満防止対策をアピールするうえで絶好の機会だった。
「韓国は現在、経済の急成長とともに、肥満者の割合が急上昇しています。欧米や他のアジアの国に比べても速い。これまで西洋を中心に増えていましたが、いまはアジアで集中的に増えているのです」と、学会長を務めた翰林医大ヒョン・ジュン・ユー教授は強調する。
韓国の国民健康栄養調査によると、20歳以上の成人約3000万人の過体重(標準体重より重く肥満に近い)・肥満の率は2005年には31・7%に達し、1998年から5・4%増えた。特に男性は25%から35・1%と10%も増えている。女性は年齢を重ねるほど高まり、50歳、60歳代では4割を超えている。こうした肥満増による医療費など経済的なコストは約19億ドル(約2280億円)に達するとの試算もある。
このため、韓国の保健福祉省では「ヘルスプラン2010」として、2010年までに過体重・肥満の率を30%未満に下げ、標準体重人口を増やすことで、だれもが72歳まで健康な生活が送られることを究極の目標に掲げている。
肥満関連の具体的なプログラムとしては、健康的なダイエット、運動量の増加、予防治療のガイドラインの設定−などをテーマに保健所の指導を中心にした教育プログラムなどを開発している。
次世代を担う小児の肥満も深刻な問題だ。原因としてファストフードなど高脂肪の食品の食べ過ぎや、厳しい受験勉強で長時間いすに座ることなどがかかわっているとみられる。
肥満による心臓や脳血管の病気、糖尿病が増えていることから、具体的な病気と関連した対策も進んでいる。治療優先のプログラムだが、内臓脂肪が原因で心筋詰まる*など生活習慣病を起こすメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)についても予防の面で政策に取り入れている。
韓国と同様、経済成長を続ける台湾も肥満急増の危機にさらされていた。台湾当局の調査によると、20歳から64歳までの過体重者は26・2%と高く、小児は15%にもなる。
こうした事態に国民の関心が高まったきっかけは2002年、約10万人の市民が集まって台北市で開かれた大イベント、総計100トンの体重減量プロジェクトだった。人数割りにすれば1人当たり1キロの減量だが、インパクトは大きかった。医療関係者らも参加し、8カ月で約14万5000人が指導を受け、1人あたり平均1・3キロの減量に成功した。「千里の道も一歩から」である。
学会に参加した台湾の張智仁・国立成功大学医学系教授は「肥満防止対策としては、まず政策で制度や施設を整備することでしょう。次いで市民団体が運動やダイエットのプログラムを指導する。そして、医療が病気を発症した肥満者を指導するのがベストでしょう」と説明する。
「メタボリックシンドローム患者の率は高くなり、25%にまで達しています。診断基準は心臓病などさまざまな病気を事前に防げるのでこれを積極的に活用していきたい」と意欲を見せた。(飽食社会取材班)
(2007/02/25)