産経新聞社

メタボリックシンドローム

【飽食社会への警告】第5部(6)アジアの肥満とメタボリックシンドローム

 ■「肥満対策」は背水の陣

 「急速な肥満人口の増加の状況を考慮して、われわれは各国が早急に肥満関連政策を樹立し、施行することを求める」

 このような「ソウル宣言」が、韓国・ソウル市で開かれたアジア・オセアニア肥満学会議に参加した各国の学者によって署名された。今回の会議には各国の肥満の進行状況を把握し、抜本的な対策に結びつける目的もあったからだ。

 「肥満を病気ととらえて国家が取り組み、対策を練って解決しなければならない時期に来ています。アジアの国々がどのような対策をとればいいのか、情報交換する場にもなりました」と学会長を務めたヒョン・ジュン・ユー翰林医大教授は説明する。

 日本からは、独立行政法人国立健康・栄養研究所の吉池信男研究企画評価主幹が発表した。内臓脂肪の蓄積により高血圧、高血糖などの症状がわずかに高くても重複すれば動脈硬化を起こし、心臓病など生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)。その予防のため、日本が来年4月から始めるプロジェクトについて説明した。

 プロジェクトは、メタボリックシンドロームを予防すれば心臓病など複数の病気を未然に防ぎ、医療費削減につながることから、地方自治体や企業の健康保険組合など事業主体である保険者に対し、生活習慣病関連に絞った特定健診や特定保健指導を行うことを義務づけた。

 特定健診の対象者数は40歳から74歳までの約5700万人。平成27年を目標にメタボリックシンドロームの該当者を25%以上減らすという、まさに背水の陣ともいえる取り組みだ。

 一方、国内の自治体では、これまでにさまざまな健康対策を独自に立ててきた。ユニークなのは徳島県。糖尿病死亡率が全国一高い状態が13年間も続いている。このため、昨年、阿波踊りの要素をふんだんに取り入れた健康体操を考案した。3分半の体操で全身運動を無理なく行う内容だ。

 県健康増進課によると、公共機関が発達していないためマイカー利用者が多い。1日の平均歩行数が男性約6500歩、女性約5900歩と全国平均より1000歩も少ないなど運動不足は否めない。「慣れ親しんだ踊りが、本格的な運動療法につながれば」と期待する。

 神奈川県藤沢市の健康づくり事業(3年間)の保健指導も成果をあげている。運動療法コース(356人)では、「週2回以上、1回30分以上」の運動習慣を身につけた人が51・9%から61・8%と10%も増えた。平均体重が57・3キロから56・6キロに減った結果、血圧、総コレステロールなどが改善された。

 食事療法コース(154人)でも、規則正しく朝食を食べる人が64・5%から82・6%に増加。血液中に含まれる中性脂肪の平均値が134mg/dlから114・6mg/dlに減った。

 同市保健医療センターの保健師、鈴木清美さんは「継続的な参加を促したことにより、一朝一夕では達成しにくい生活習慣の変化を起こしたことが大きい」と分析する。

 国を挙げての肥満戦略は自治体、企業を巻き込んで進む。達成したときの利益は大きいが、地道な努力の積み重ねが必要なだけに持久戦が強いられる。(飽食社会取材班)=おわり

                       ◇

 この連載は坂口至徳、平沢裕子、柳原一哉、大串英明が担当しました。

(2007/03/02)