産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康らいふ】メタボリックシンドローム 防げ!!心血管疾患(2−2)

 ■重大性増す糖尿病対策

 野出 血管の正常な働きには、血管壁の一番内側にある内皮(細胞)機能とその外側の平滑筋(細胞)機能の両方が大事。動脈硬化や心筋梗塞の発症にはこうした内皮機能の障害がベースにあります。平滑筋機能障害と併せて「血管不全」といっています。まず食後の血糖が上がるIGTの段階で内皮が損傷を受け、糖尿病が進行してしまうと高血糖の影響で最終的には、平滑筋細胞が障害され動脈硬化が進むことになります。これを防ぐには、ARBもいいが、平滑筋機能障害と糖尿病が重なったりすると、血管壁に石灰が沈着して血管が硬化し、血流が悪くなるので、平滑筋細胞内へのカルシウムの流入を抑えるカルシウム拮抗薬が有効なのです。平滑筋の過収縮が、血管けいれんの原因となって不安定プラークの破裂を迎えるので、プラークの破裂を抑えるためにも、カルシウム拮抗薬が効いています。

 猿田 降圧が臓器保護にも役立ちます。もう一つ大事なことは家庭血圧で、24時間血圧という概念を考えておかなければいけない。病院での測定よりも、むしろ自宅で血圧が高くなる早朝高血圧、仮面高血圧の人がかなり多く、危険性があるのです。高血圧学会でもキャンペーンを始めていますが、家庭で朝夕2回測定し、1回目は、朝食前、薬を飲む前に。夜は寝る30分ぐらい前に測ること。その2つが徹底できれば、かなり外来血圧もコントロールしやすい。

 野出 それは大事な点であって、心筋梗塞、脳梗塞の発症が一番多い時間帯は朝で、まさに血圧のピークのときに起こりやすいのです。ですから、朝、きっちり血圧を下げておくこと。肥満やメタボリックシンドロームのある人は、血圧のリズムが狂いがちで急上昇するタイプであり、早朝高血圧の人が多いので、人一倍注意する必要があります。

 猿田 心筋梗塞や脳梗塞を予防するのに血栓(血小板凝集)抑制薬を使うことに関しては、どうお考えでしょうか。

 野出 アスピリンは、もともと解熱鎮痛薬として開発されましたが、それ以外にも多くの効果が見いだされ、現在では心筋梗塞や脳梗塞の予防薬として広く使われています。ですから、このような症状の人は使うべきだと思いますが、動脈硬化のリスクがあると診断された人でも使っていくことは勧められますね。頸(けい)動脈エコーを撮るなど、早く動脈硬化を見つけることがポイント。メタボリックシンドロームや糖尿病のある人は、アスピリンを積極的に使ってもいいのではないでしょうか。アスピリンには、動脈硬化の血栓抑制と同時に抗炎症作用もあるのです。

 猿田 血管内皮の障害というのは、血糖だけでなく、コレステロールや血圧も大いに関係してくる。

 野出 いったん石灰化を起こした血管機能は、血糖をよくしても元に戻らない。内皮機能障害の段階では、まだ戻ることも可能なので、早期から薬剤を使うなどして介入した方が効果的なのです。メタボリックシンドロームは、IGTと病態が一部オーバーラップしているところがあります。メタボリックシンドロームも血管内皮機能障害を起こすので、運動など生活習慣の改善も、機能回復には有効ですね。

 猿田 メタボリックシンドロームの診断基準のいいところは、ウエストというわかりやすい指標を採用しているからです。必ずしも85センチ(男性基準)にこだわらず、例えば82センチの人でも、ウエスト径を1センチ下げるだけで、中性脂肪も血糖も下がるということを意識してほしい。高血圧や糖尿病予防もメタボリックシンドロームがキーワードになっているのですから、国民にもわかりやすい形で啓発し、守れることを単純に一歩一歩進めていかなければと思います。

                   ◇

【プロフィル】猿田享男

 さるた・たかお 慶應義塾大学医学部卒業。米国テキサス大学留学、慶應義塾大学医学部内科・腎内分泌代謝科部長代行など経て昭和61年医学部教授。医学部長などを歴任し、現在、同大医学部名誉教授。東京都済生会中央病院特別顧問、生活習慣病予防協会理事。

                   ◇

【プロフィル】野出孝一

 ので・こういち 佐賀医科大学卒業。大阪大学大学院博士課程修了後、ハーバード大学留学。平成14年、佐賀医科大学(現佐賀大学医学部)内科学教授。専門は、虚血性心疾患と慢性心不全の病態解明。日本内科学会・日本循環器学会評議員など。

                   ◇

 ■「撲滅運動キャンペーン」に取り組んでいます

 産経新聞社では、「メタボリックシンドローム撲滅のためのキャンペーン」に取り組んでいます。詳しくは、メタボリックシンドローム撲滅委員会専用ホームページ(http://www.metabolic−syndrome.net/)に掲載されています。

 【主催】メタボリックシンドローム撲滅委員会、産経新聞社、フジテレビジョン、ニッポン放送、フジサンケイ ビジネスアイ

 【後援】厚生労働省、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本血栓止血学会、日本心臓病学会、日本医師会、日本臨床内科医会、日本歯科医学会、日本歯科医師会、日本歯周病学会、日本抗加齢医学会、日本CT検診学会、日本健康運動指導士会、健康・体力づくり事業財団、日本糖尿病財団、日本心臓財団、日本栄養士会、日本薬剤師会、日本フィットネス産業協会、日本製薬工業協会、サンケイリビング新聞社、扶桑社

 【協力】リビングプロシード

 【メタボリックシンドローム撲滅委員会】◇委員長 松澤佑次・住友病院院長(日本肥満学会理事長)◇委員 春日雅人・神戸大学医学部付属病院長(日本糖尿病学会理事長)、藤田敏郎・東京大学大学院教授(日本高血圧学会前理事長)、北徹・京都大学理事・副学長(日本動脈硬化学会理事長)、齋藤康・千葉大学医学部付属病院長(日本肥満学会副理事長、日本動脈硬化学会副理事長)、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長

                   ◇

 ご意見・お問い合わせ・情報等は、郵便もしくはFAXで。《〒100−8079 産経新聞メタボリックシンドローム撲滅実行委員会事務局》(FAX03・3243・1800)まで。

(2007/03/09)