■意識に応じたアプローチで効果
さまざまな生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の大掃討作戦が、平成20年4月からスタートする。厚生労働省が進める特定健康診断・特定保健指導で、40歳から74歳までの5600万人が対象という世界でも例がない規模で実施。平成27年までに生活習慣病の有病者・予備群を25%減らすのが目標だ。医療費抑制のための壮大な予防医療の試みであり、スリム社会への挑戦でもある。
メタボリックシンドロームは、内臓の周囲への脂肪の蓄積が原因で、高血圧、高血糖、高脂血などの症状が現れる。それぞれの症状が軽度であっても、重複すれば動脈硬化が起こり、心臓病など複数の生活習慣病につながる。
原因から結果まで明解なので、メタボリックシンドローム該当者・予備群は納得しやすく生活改善に励める。食事・運動療法により内臓脂肪を減らせば、生活習慣病をひとまとめに予防できるという多大な利点も見込まれる。こうしたことから、メタボリックシンドロームの考え方を取り入れた特定健診・保健指導を行うことになった。
さらに平成12年に10年計画で始まった国民運動「健康日本21」を推進するため、初めて明確な数値目標を打ち出し、成果主義を表明した。達成するには、意識の変化を行動に結びつけ、積極的に生活改善に取り組んでもらう「行動変容」を促進する的確な保健指導が不可欠のテーマになった。長年の生活習慣を改善するのは、並大抵の努力では成功しないからだ。
「自分から考えて生活改善の行動を起こし、それを持続できるようになるまで、押し付けではなく、支援の形で対応するのが望ましいでしょう」。愛知県の健康づくり拠点施設「あいち健康の森健康科学総合センター」(東浦町)副センター長の津下一代医師は、実績を踏まえてこのように強調した。
センターはトレーニング室など全国でも有数の設備が整った施設で、いち早くメタボリックシンドロームの考え方を取り入れた保健指導を行っている。これまでの成果のひとつが、メタボリックシンドロームの診断基準をオーバーする腹囲90センチ以上の女性62人を対象に行った保健指導。わずか3カ月でメタボ該当者は18人から4人に激減した。その4人も高血圧など危険因子が3つだけ残り、診断基準(2つ以上)以下に抑えるまであと一歩のところに到達した。
成功の秘訣(ひけつ)は、意識の変化に応じてアプローチの仕方を変えたことだった。健康に興味を持ち始める「関心期」から行動に移す「実行期」、継続して改善に挑む「維持期」と行動変容に至るまでの過程でいくつかの転機の段階がある。そのさい、「まず1週間やってみて手応えを感じたら続けて」とハードルを低くしたり、検査データから10年後の血糖値の予測をはじきだして「10年後の自分にいま投資して、長く健康で生活しませんか」とやんわり背中を押したりして説得する。集団指導で、経験を語り合い「自分もメタボから脱することができる」という気持ちを起こさせることも重要という。
このような優れた改善例を全国から集めて、標準的な健診・保健指導プログラムが組み立てられた。
手順は、腹囲が基準値(男性85センチ、女性90センチ)を超え、高血圧などリスクがひとつでもあれば「動機づけ支援」、2つ以上なら「積極的支援」と優先順位を決める。指導は個別やグループで行うほか、電話やメールでも臨機応変に対応する。
これだけの保健指導を行うには、膨大な人員と労力を費やすことが予想される。それに見合う持続的な効果を期待したい。(飽食社会取材班)
(2007/06/30)