産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康らいふ】健康国家づくりへ新戦略 政府の「新健康フロンティア戦略」

 ■日本糖尿病学会理事長・春日雅人氏に聞く

 「健康国家への挑戦」と題して、今後の10年、日本の健康戦略の指標となる政府の「新健康フロンティア戦略」が、このほどまとまった。健康寿命をどう延ばしていくか、予防重視の健康づくりなど、国民運動化することを盛り込んでいる。中でも注目されるのが、働き盛りを襲う「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)への克服力」。増え続ける糖尿病や高齢者介護の予防にもつなげていく。内閣官房長官主宰の同戦略賢人会議(座長・黒川清内閣特別顧問)が各分野の有識者を集め策定したもので、会議のメンバーである日本糖尿病学会理事長(神戸大学病院長)の春日雅人氏に聞いた。(大串英明)

 ■子供から高齢者まで予防重視の指導

 安倍晋三首相(当時官房長官)の肝いりで始まった「健康フロンティア戦略」を踏襲、昨年暮れから関連各省庁担当者、および国立がんセンター中央病院院長の土屋了介氏、スポーツジャーナリスト・増田明美さんらが会合を重ね、春日氏は、主に働き盛り、高齢者対策を受け持った。

 「結局、健康のもとは家庭や地域であり、その力を根っこに、図のような命題の枝葉を茂らせ、健康国家を築こうというもの」、それも「国民自らがそれぞれの立場に応じて対策を行い、家庭・地域全体で支援していくことが重要です」と春日氏は語る。

 日本は世界一の長寿国。しかし、必ずしも今後ずっと維持していけるかわからない危険な兆候もある。そのためにも、日本国自体の健康力の促進、つまり、医療・福祉技術など常にイノベーション(革新)を促進する「研究開発力」や高齢者の社会参加など促す「人間の活動領域拡張力」を備えることも、健康国家を維持する大事な支えだとしている。

 ■「メタボ克服力」など重点 「テーラーメード予防」を導入 地域と連携し国民運動に

 重点分野として、「メタボリック克服力」「こどもの健康力」「女性の健康力」「がん克服力」「こころの健康力」「介護予防力」「歯の健康力」「食の選択力」「スポーツ力」の9つを挙げている。冒頭の「メタボ克服力」について春日氏は、「働き盛りの疾患、高齢者問題も、すべてはメタボリックシンドロームに端を発している。メタボリックシンドロームを予防することが結局、要介護を減少させ、糖尿病の発症、合併症、それに脳卒中などを防ぐことにもつながる。今回の戦略には、そうしたコンセプトをより強く打ち出しています」。

 今回のメタボ克服力の特徴の1つは、「『テーラーメード予防』という新しい医療概念を導入したこと」(春日氏)。テーラーメード治療はよく使われる言葉だが、予防についても、来年度施行される「特定健診」制度などに対応して早めの対策を重視。「何百人、何千人をひとくくりにして食事・運動療法をするのでなく、遺伝素因なども含めてその人なりの個人個人の予防プログラムを立てて指導していく必要があります」と春日氏。

 もう1つ、糖尿病に関連しては、最終的に糖尿病のステージに応じて予防・合併症への移行を阻止できる医療体制を作ること。国の指導で大掛かりな予防・治療の臨床研究(J−DOIT)も始まっているが、ハイリスクであっても、半分以上が未受診・未治療というのが現状だ。打開策として、春日氏は「患者さんのステージにあった医療指導が必要で、全国にがんの拠点病院ができているように、特に治療が難しい人には、各都道府県にも糖尿病の拠点病院を作ってきちんと診てもらう必要があります。また全体を統括する司令塔も必要」と話す。

 こうしたメタボリックシンドローム、および糖尿病両用の作戦が進行していけば、合併症や脳卒中を併発した高齢者の「介護予防力」につながっていく。一方、「こどもの健康力」も重要視。最近、6〜15歳を対象とする子供のメタボリックシンドローム診断基準(男女児とも腹囲80センチ以上が赤信号など)が設定されたように、外遊びの減少や子供のころからの「食育」が懸案となりつつある。これらは「食の選択力」や「スポーツ力」の奨励、それにむしろやせすぎが心配な若い女性に対する啓発も含めた「女性の健康力」など、家庭や地域ぐるみ、健康教育で支援したいとしている。「こころの健康力」についても、今や職場での「うつ」などメンタルヘルスへの早期取り組みが大きな課題となっている。

 今年4月から「がん対策基本法」が施行されており、「がん克服力」も患者の視点からQOL(生活の質)を含めた予防・治療の充実が求められている。

 こうしたさまざまなニーズに応えるべく、技術開発や人材養成が欠かせないが、これら戦略に基づいてアクションプランを立て、国民運動としていくために、地方自治体などとも連携して「健康大使(仮称)」を選び、広報体制も充実していく。会議最終日には、安倍首相も列席した。

(2007/07/08)