産経新聞社

メタボリックシンドローム

【ノルディックウォーキング】2本のポールで良質な全身運動

 ■足腰の負担軽め、中高年も安心

 フィンランド生まれの新しいスポーツ「ノルディックウォーキング」をご存じだろうか。2本のポールを使って歩くことで、通常のウォーキングに比べ運動強度が高く、消費エネルギーが2割もアップするのが特徴。足腰への負担が軽く中高年も安心して楽しめるとあって、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防などの観点から、医療関係者らの注目を集めている。(中曽根聖子)

 ノルディックウォーキングは、フィンランドのクロスカントリースキーの選手らが夏場のトレーニングとして、ポールをもってハイキングやランニングをしていたのが始まり。1990年代後半にその運動効果が発表されると、年齢を問わず手軽にできるエクササイズとして急速に人気が高まった。今では欧州を中心に約600万人の愛好家がいるという。

 国内ではまだなじみが少なく、今年1月に日本ノルディックフィットネス協会(仙台市)が設立され、普及に乗り出したばかり。国際ノルディックウォーキング協会(フィンランド)認定のナショナルコーチの資格をもつ高橋直博事務局長は「ストックのような専用ポールを地面について上体を前に押し出しながら歩くので、歩幅が大きくなり、通常のウォーキングに比べエネルギー消費が約20%上昇します。足腰にかかる負担も15〜25%程度軽減できる」とその効用を説明する。

 また、ポールが杖となるので高齢者にも安全。下半身だけでなく、年齢とともにたるみが気になる二の腕や胸、背中の筋肉もバランスよく鍛えられるという。

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 最近はメタボ対策として、医療関係者も注目している。生活習慣病・肥満外来を開設するウェルネスササキクリニック(東京都板橋区)では昨年秋から、初期の高血圧や糖尿病患者らを対象に運動療法の柱としてノルディックウォーキングを導入した。インストラクターの資格を持つ佐々木巌院長は「通常のウォーキングより短時間で質の高い全身運動ができるので、忙しい中高年にもぴったり」と話す。

 実際、筋力トレーニングなどと組み合わせて9カ月間運動を続けた男女19人(平均年齢71歳)を調べると、平均腹囲が87センチから84センチに減少した。

 高橋さんによると、身体能力を問わず誰にでも手軽に安全にできるスポーツという認知が高まるにつれ、病気のリハビリや介護予防、体力増進を目的に導入する病院や自治体が増えているという。

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 ノルディックウォーキングを続けることでバランス能力が高まり、転倒予防に効果がある−こんな仮説をもとに今月、60〜70歳の女性を対象にした研究もスタートする。以前から高齢者に適した運動療法として注目する東北福祉大予防福祉健康増進センター(仙台市)が、地域住民向けの教室を開く宮城県山元町の協力を得て実施。「高齢者は転倒をきっかけに寝たきりになるケースが多い。全身のバランス機能の向上で転倒予防につながり、健康寿命を延ばすことができるかもしれない」と、センターの笠間建さんは期待する。

 最近は、体験教室やイベントも各地で開かれている。健康をテーマにしたセミナーなどを企画・運営する「元気学校」(東京都千代田区)は22日、東京・北の丸公園で体験会を開く予定だ。

 校條(めんじょう)諭社長は「ジョギングなどと違って会話を楽しみながら歩けるのも魅力。友人や夫婦でこのスポーツの快感をぜひ体験して」と呼びかけている。

(2007/09/19)