産経新聞社

メタボリックシンドローム

【健康らいふ】「メタボリックドミノ」理解し予防(2−2)

 ■慢性腎臓病、最大原因はメタボ

 −−先日、メタボで運動に励んでいた人が亡くなり、話題になりましたが

 伊藤 私の想像でしかありませんが、その人は実は心臓の方もすでに悪くなっておられたのではないでしょうか。メタボリックシンドロームは、本来、動脈硬化や糖尿病の予備群であるという考え方を基本としており、すでに糖尿病を患っている人や心血管障害がかなり進んでいる人、つまりメタボリックドミノの下流にいる人では、診断も治療も違ってくると思っています。

 −−糖尿病に関しては、さまざまな指標がある

 伊藤 空腹時血糖を基本にしています。通常、糖代謝の異常は、食後高血糖が一番先に変化してくるわけで、それを耐糖能の異常の診断基準にしたいところですが、なかなか評価が難しい。ブドウ糖を飲んで採血してスクリーニングするブドウ糖負荷試験も手間がかかり一般向きではありません。1、2カ月間の平均血中ブドウ糖濃度の指標である「ヘモグロビンA1c」を用いれば食後高血糖も比較的早めにとらえることができるのではないかと思っています。メタボリックは、どちらかというと、食事を取ったときに血糖が上がりやすいタイプの人に起こりやすいので、ヘモグロビンA1cの方がより鋭敏な検査になると思うのです。

 −−腎臓の領域では

 伊藤 実は今、生活習慣病などを基盤とする慢性腎臓病(CKD)が、心血管病のリスクファクターとして注目され、啓発キャンペーンも行われているのです。腎機能が6割になった人がわが国でも約2000万人いるといわれ、それはメタボリックシンドロームの予備群を入れた人数とほぼ同じです。腎臓固有の要因だけでなく高血圧や糖尿病ともからんで発症してくるわけですが、その人たちは心疾患を起こす率が普通の人の2倍以上高くなることがわかってきたのです。

 −−メタボリックシンドロームとの関係は

 伊藤 実は、CKDの最も大きな原因はメタボリックシンドロームです。最近は、肥満そのものが腎臓を悪くすることがわかってきました。それと前述の、血圧を上げるアンジオテンシンIIが腎臓の悪化に関与しているともいわれています。腎症から透析へ移ることを阻止するだけでなく、メタボリックシンドローム対策と同様、CKDの段階で治療を始めて脳卒中や心筋梗塞の予防も図ろうというわけです。

 −−メタボリックを軸に、医療の世界も大きく変わろうとしている

 伊藤 糖尿病なら糖尿病専門医、心臓病なら循環器医などと、これまでは自分の領域での治療で済みましたが、これからはそうはいきません。糖尿病と心臓病が非常に関係が深いことがようやく知られるようになってきましたが、これからはさらにメタボリックドミノの全体の流れをつかんでケアしないと、本当に患者さんのためになる治療をしていることにはならないのです。メタボリックドミノの考え方からすれば、メタボリックシンドロームもCKDも、代謝内分泌疾患と循環器疾患がミックスした全身疾患というとらえ方ができます。本当に体の中で何が起きているのか、一貫して知っておく必要があるのですね。

 −−どうしたらメタボリックシンドロームを解消できるか

 伊藤 本質的には肥満の解消に尽きます。何を食べるかよりもまず基本的には、カロリー摂取を減らすこと。むろん血糖が上がりにくい食品を主にしてバランスよい食事ができればそれにこしたことはありませんが、栄養学的にまだ何が体にとっていいものなのかというしっかりしたエビデンス(科学的証拠)がなく、また栄養過多の現状では、カロリーの絶対量を少なくすることが基本になってくると思います。減量に関しては、食事7割、運動3割の寄与であり、やはり食事のケアが重要です。お昼、外食で脂っこいものを食べずに、副食をつけず、おにぎり1個で済ますこともありですね。

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【プロフィル】伊藤裕

 いとう・ひろし 京都大学医学部卒業、博士号取得。米国ハーバード、スタンフォード大学で博士研究員。京都大学大学院臨床病態医科学講座助教授を経て平成18年、慶応義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授。第5回日本心血管内分泌代謝学会・高峰譲吉研究奨励賞など受賞。日本内分泌学会理事など多数。

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 ≪「撲滅運動キャンペーン」に取り組んでいます≫

 産経新聞社では、「メタボリックシンドローム撲滅のためのキャンペーン」に取り組んでいます。詳しくは、メタボリックシンドローム撲滅委員会専用ホームページ(http://www.metabolic−syndrome.net、metabolic−pro.net)に掲載されています。

 【主催】メタボリックシンドローム撲滅委員会、産経新聞社、フジテレビジョン、ニッポン放送、フジサンケイ ビジネスアイ

 【後援】厚生労働省/日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本心臓病学会、日本血栓止血学会、日本歯科医学会、日本歯周病学会、日本抗加齢医学会、日本CT検診学会、日本人間ドック学会、日本総合健診医学会、日本医師会、日本臨床内科医会、日本歯科医師会、日本栄養士会、日本薬剤師会、健康・体力づくり事業財団、日本健康運動指導士会、日本フィットネス産業協会、日本生活習慣病予防協会、全国保健センター連合会、全国保健師長会、日本糖尿病財団、日本心臓財団、日本製薬工業協会、日本ウオーキング協会/サンケイリビング新聞社、扶桑社

 【協力団体】高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム

 【メタボリックシンドローム撲滅委員会】◇委員長 松澤佑次・住友病院院長(日本肥満学会理事長)◇委員 春日雅人・神戸大学大学院教授(日本糖尿病学会理事長)、松岡博昭・獨協医科大学副学長(日本高血圧学会理事長)、北徹・京都大学理事・副学長(日本動脈硬化学会理事長)、齋藤康・千葉大学理事・副学長(日本肥満学会副理事長、日本動脈硬化学会副理事長)、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長、中尾一和・京都大学教授(日本内分泌学会理事長)

(2007/10/30)