産経新聞社

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム撲滅運動(4−3)

 【あいさつ】

 ≪委員長 松澤佑次・住友病院長≫

 ■医学会・メディア・行政が協力

 コレステロール対策だけが血管病の予防と考えていた時代から、総合的に予防する時代になり、それも内臓脂肪の蓄積が原因であることは、世界的なコンセンサスになっています。従って、そのようなキープレーヤー(主因)を改善することによって、薬なしでも多くの病態が一網打尽に改善できる可能性がある。その結果として、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞など動脈硬化による病気を効率よく予防できるということでメタボリックシンドロームの疾患概念を発表したところ、厚生労働省に極めて重要視していただき、メタボの概念をベースにした予防対策を政策として行うことになりました。このさい、非常に大事なことは、腹囲や体重などは、自分で判定できるわけですから、国民の皆さまにそれを減らすことの重要性を正しく知っていただくために、メディアが非常に重要な役割を示すところです。

 いまだかつて、このように予防医学を、医学会とメディア、さらに行政が一緒に協力して取り組んだことは、おそらくなかった。また、産業界の協力もあり、ここまで来ました。

 その結果、国民的な認知度は驚くほど早く広まりました。国民の方がますます自分の腹囲に関心を持って、毎朝ズボンをはくたびに気にしていただくことになっていけば、いろいろなものが改善する可能性が確実に期待されるという病態であります。

 この撲滅委員会がさらに発展して、具体的な実行委員会ができたことからも、これからは効率のよい対策の実践にもっと重点を置いて結果を出し、それをまた、広い範囲で使用していただく時期になってきたと考えています。

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 □オブザーバー 関英一・厚生労働省健康局生活習慣病対策室長

 ■「健やか生活習慣国民運動」展開

 行政の取り組みは、成人病対策と呼んでいた時代から、生活習慣病と言い直して、大きな動きになったのは昭和50年代前半ぐらいからです。平成12年からは「健康日本21」という旗印のもとに施策を推進してきました。

 今回の医療制度改革について、高齢者の医療を確保するという観点から、政府部内で2年ほど前から議論し、また国会での審議も行いました。ちょうどその時期に、医学界でも飛躍的な進歩があり、たとえば脂肪細胞の新たな役割、内臓脂肪がリスクとして大きく働いていることなどがわかってきました。その中で、行政施策として浮上してきたのが、来年春からの特定健診・特定保健指導です。

 公衆衛生の観点から、対策については、リスクの高い人を見つけ出し、対策を講じていく「ハイリスク・アプローチ」と、国民全体を挙げての理解を深めて取り組みを進めていく「ポピュレーション・アプローチ」の両方があいまって効果が出てくる。最終的に国民全体を見たときにインパクトが出て、効果が実証できることが、今日的な課題だと思っています。

 行政の得意とする分野は、例えば国民全体に対してスタンダードを示すとか、あるいは国民健康・栄養調査をして全体の動向を見ていくという取り組みです。

 そういった面での努力の中で、国民の一人一人に正しい情報を伝える、あるいは、大胆な発想で関心を集められるような取り組みをしていくということについては、圧倒的にメディアや民間企業の人々のお力のほうがはるかにすぐれているわけで、そういったところについて、われわれも勉強させていただきながら、一緒にやっていければと思っている次第でございます。

 行政の取り組みとしては、来年から、「健やか生活習慣国民運動」を展開します。これまでの「健康日本21」に加えて、特に栄養、運動、たばこの問題に重点をしぼった形で、しかも、民間のいろいろな創意工夫も入ってきやすいような形で国は取り組みをしていきたい、と思っています。

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 □新委員 中尾一和・京都大学教授

 ■社会的な取り組みが重要

 日本内分泌学会は、ホルモンの意義を研究する学会です。

 なぜホルモンがメタボリックシンドロームにとって重要かといいますと、体内で多くのホルモンが働いていますが、脂肪組織が体内で最大の内分泌器官であるということがわかってきたからです。なかでも脂肪細胞から分泌される一群のホルモンである「アディポサイトカイン」が注目されています。肥満によってアディポサイトカインの分泌が変化し、肥満症やメタボリックシンドロームの病態形成にからんでいることが明らかになりつつあります。

 また、古くから肥満とメタボリックシンドロームでは「インスリン抵抗性」が注目されてきました。

 さらに、体内には、巧妙な食欲調節システムが存在し、ホルモンのような調節物質が働いています。以上述べたように日本内分泌学会はメタボリックシンドロームにおけるホルモンの意義に注目しています。

 最近、脂肪組織と脳の食欲調節機能が密接に関連することが明らかになってきました。私たちは、臨床家であり、研究者であるという立場から、研究の成果と、メタボリックシンドロームの患者さんにかかわる経験を生かして、撲滅委員会の活動に協力をさせていただきたいと考えています。

 現代における肥満症やメタボリックシンドロームの増加は、人類の進化や生存、現代の食の問題などと深くからみあっており、社会的な取り組みが極めて重要であると認識しています。

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 ≪実行委員会メンバー≫

 リーダー

 宮崎 滋 東京逓信病院内科部長

 委 員

 【医療分野】

 片山 茂裕 埼玉医科大学第4内科(内科学内分泌・糖尿病内科部門)教授

 和田 高士 東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長

 中川 徹 日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長

 横出 正之 京都大学探索医療センター・探索医療臨床部長・教授

 【医療・保健指導分野】

 津下 一代 あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長

 野口 緑 兵庫県尼崎市国保年金課・保健師

 【運動指導分野】

 宮地 元彦 国立健康・栄養研究所健康増進プログラム運動ガイドラインプロジェクトリーダー

 斉藤 満 (社)日本ウオーキング協会事務局長

 菅野 隆 健康創研代表・健康運動指導士

 【食事指導分野】

 鈴木志保子 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科准教授(管理栄養士、医学博士)

 柴崎 千絵里 東京女子医科大学病院栄養科

 小野 真実 NTT東日本首都圏健康管理センタ保健支援科

(2007/11/17)