戦後日本人の身長が伸び、感染症による死亡率や脳卒中死亡率を減らすことに大きく貢献した食品の一つに牛乳があります。しかし、牛乳が体に悪いことを主張する本がベストセラーになったりして、牛乳の摂取にブレーキがかかっています。
牛乳が体に悪いことをカルト的に主張する本が周期的にバカ売れします。30年あまり前にも、「白砂糖、精製した食塩、白米、牛乳…白いものはすべて、体に悪い」などという説が結構はびこったことがあります。
筆者は、昨年10月14日付の本コラムで、地域の高齢者の10年間の追跡調査で牛乳を毎日飲用する人は明らかに長生きすることをグラフを用いて示しました。長生きするのみでなく、身長の縮み方も牛乳を飲まない人より少ないことが分かったのです。
今回は別のデータを紹介します。昨年、2005年の国勢調査に基づく都道府県別平均寿命が発表されたのは周知の通りです。長野県が、男性で1位、女性では5位で、総合すればトップであることが分かりました。
ところがこの長野県の牛乳摂取量が日本一であることは案外知られておりません。図に示したように、長野県のカルシウム摂取量は全国平均を10%も上回っています。高齢者においても全国平均を上回っています。
日本人は少なくとも1日600ミリグラムのカルシウムを摂(と)るべきであるといわれながら、毎年10%近くそれを下回っています。長野県は立派に600ミリグラムの基準を上回っているのです。
長野県の牛乳飲用量がすべての県を上回っているか否かを証明するのは容易なことではありません。都道府県別の食品や栄養素摂取は明らかになっていません。熱心な県のみが独自の調査(毎年とは限らない)をしているに過ぎないからです。
しかし、各都道府県の県庁所在地の1世帯あたりの年間購入量を示す家計調査年報により、推定することは可能です。ちなみに、図に示した平成10年度でみますと、全国の県庁所在地のうち、長野市の牛乳購入量がトップでした。
県庁所在地の傾向は県全体の傾向をかなりよく反映するものと考えられます。少なくとも、長野県の牛乳飲用量は日本のトップレベルにあることは疑いありません。
牛乳のタンパク質には血圧を下げるなどのさまざまな生理活性作用があります。牛乳200ミリリットルに含まれる飽和脂肪酸は人間に必要な飽和脂肪酸全体の40%くらいを占め、どうしても必要です。
この5年くらいの間に、牛乳を飲用することがメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防になることを示すデータが続々出されています。牛乳を飲用すると太るというのは、まったく根拠のない迷信なのです。
牛乳はアミノ酸価100%のもっとも人類にとって大切な食品であることを銘記しましょう。(桜美林大学大学院老年学教授 柴田博)
(2008/01/13)