■ガイドライン作成 一般の人に知ってほしい正常値
−−そのほか、食後高血糖のリスクとして
ガイドラインではさまざまのリスクを挙げています。例えば、網膜症のリスク上昇▽がんのリスク増加▽認知機能低下なども含まれています。とにかく食後高血糖が有害なことは確実で、対策の必要性を訴えているのです。
−−血糖上昇のメカニズムについて
基本的には、遺伝的な因子と環境因子の2つが関係しています。遺伝因子は大きく分けて、血糖値を下げるホルモンである、インスリンの分泌に関連するものと、インスリンの抵抗性に関連するものとに分けられます。これらの因子に、過食や運動不足、肥満という糖尿病の発症を促す外からの嵐(環境因子)が襲いかかると糖尿病が発症します。
エネルギーが体に入ってくると、すばやくインスリンを分泌して血糖値を低下させなければなりません。初期インスリン分泌が思うようにいかないと、食後の血糖値が上がってしまう。この食後血糖値を下げるために、膵臓(すいぞう)は頑張ってインスリンを分泌するのですが、次第に膵臓に負担がかかり、ついには糖尿病になってしまうわけです。
−−なるほど。では、インスリン抵抗性はどのように関与するのですか
インスリン抵抗性つまり、インスリンが効きにくい状態では、体はインスリンを大量に分泌してエネルギーを取り込もうとするので、どんどん太ってくるのです。それが典型的な欧米型の肥満を伴う2型糖尿病です。
いずれの場合にしても、できるだけ早く治療することを心がけなければなりません。典型的な日本人には、インスリン分泌不全が多く、欧米に多いインスリン抵抗性で高度な肥満を呈する患者さんは少ないといわれてきました。しかし最近は日本人でも小児や若年で、欧米型のインスリン抵抗性の患者さんが増えています。過食や欧米化した生活によって、インスリン抵抗性の関与が大きくなってきたのかもしれません。
−−今年度からスタートする特定健康診査もメタボリックシンドロームに注目した内容になっていますね
糖尿病の病態のうち、インスリン抵抗性が主体となったものがメタボリックシンドローム型の糖尿病と言っても良いでしょう。肥満の程度が低いインスリン分泌不全型では、肥満を入り口にしたメタボリックシンドローム対策だけでは、見落としかねません。保健指導の基準値である空腹時血糖値100mg/dl以上、ヘモグロビンA1c5・2%以上という値がどうしてこのように低いのか、疑問に思うかも知れませんね。これらはIGTや糖代謝異常の最初のサインである食後高血糖に対応する値なのです。
−−IDFのガイドラインでは、「目標の食後高血糖値を得るためには、非薬物療法、および薬物療法のどちらも考慮すべきである」とありましたね
糖尿病の早期介入というと、主に食事療法と運動療法になります。これを数か月続けても血糖値が改善できない場合に薬物療法が始まります。ガイドラインでは、食後高血糖の治療薬を列挙するにとどめています。例えば、▽速効型インスリン分泌促進薬のグルニド系薬剤▽糖質の吸収遅延薬のα−グルコシダーゼ阻害薬▽グルカゴン様ペプチド−1誘導体など。現在、日本では速効型インスリン分泌促進薬であるミチグリニド(グルファスト)や、α−グルコシダーゼ阻害薬が臨床で使用されています。ミチグリニドは食後のインスリン分泌パターンを生理的な状態に近づけることで、食後の血糖上昇を抑えます。α−グルコシダーゼ阻害薬は、糖の吸収を緩徐にすることで食後の血糖上昇を抑える薬剤です。
−−特定健診のポイントは
最も難しいことですが、「行動変容」をいかに促すか、そしてそれをいかに継続させるかです。保健指導の現場でも、総力を挙げて取り組む必要があります。この飽食社会、メタボリックシンドローム対策は、実にタイムリーです。このように予防を見据えた健診システムは世界でも例がなく、先取りしているわけですから、ぜひとも成果が挙がるように医療従事者だけでなく、一般の方々の協力をいただきたいと思っています。
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【プロフィル】田嶼尚子
たじま・なおこ 東京慈恵会医科大学卒業。米ピッツバーグ大学小児科、同公衆衛生大学院助教授として留学、東京慈恵会医科大学第3内科講師などを経て、平成9年、同内科学講座主任教授。現在、同大学理事・医学科長兼任。日本糖尿病学会理事、日本内科学会評議員など。
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産経新聞社では、「メタボリックシンドローム撲滅のためのキャンペーン」に取り組んでいます。詳しくは、メタボリックシンドローム撲滅委員会専用ホームページ(http://www.metabolic−syndrome.net、metabolic−pro.net)に掲載されています。
【主催】メタボリックシンドローム撲滅委員会、産経新聞社、フジテレビジョン、ニッポン放送、フジサンケイ ビジネスアイ
【後援】厚生労働省/日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本心臓病学会、日本血栓止血学会、日本歯科医学会、日本歯周病学会、日本抗加齢医学会、日本CT検診学会、日本人間ドック学会、日本総合健診医学会、日本食物繊維学会、日本医師会、日本臨床内科医会、日本歯科医師会、日本栄養士会、日本薬剤師会、健康・体力づくり事業財団、日本健康運動指導士会、日本フィットネス産業協会、日本生活習慣病予防協会、全国保健センター連合会、全国保健師長会、日本糖尿病財団、日本心臓財団、日本製薬工業協会、日本ウオーキング協会/サンケイリビング新聞社、扶桑社
【協力団体】高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
【メタボリックシンドローム撲滅委員会】◇委員長 松澤佑次・住友病院院長(日本肥満学会理事長)◇委員 春日雅人・神戸大学大学院教授(日本糖尿病学会理事長)、松岡博昭・獨協医科大学副学長(日本高血圧学会理事長)、北徹・京都大学理事・副学長(日本動脈硬化学会理事長)、齋藤康・千葉大学理事・副学長(日本肥満学会副理事長、日本動脈硬化学会副理事長)、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長、中尾一和・京都大学教授(日本内分泌学会理事長)
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ご意見・お問い合わせ・情報等は、郵便もしくはFAXで。《〒100−8079 産経新聞メタボリックシンドローム撲滅実行委員会事務局》(FAX03・3243・1800)まで。
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過去の関連記事はhttp://www.sankei.co.jp/metabolic/metabolic.htmで掲載しています
(2008/02/14)