産経新聞社

メタボリックシンドローム

【スリム社会への挑戦】第2部(1)積極的な予防医療

 ■日本発の試み メタボに成否

 心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を防ぎ、医療費を大幅に削減する国家プロジェクト「特定健診・保健指導」は、4月実施の態勢が整ってきた。40歳から74歳までの男女5600万人を対象に、診断基準をもとに病気の予兆を見つけ、薬を使わずに生活習慣の改善などを支援することで発症を食い止める。これほど積極的な予防医療は前例がないだけに、効率的な実施をめぐり論議が活発だ。予防医療政策の変換につながる日本発の壮大な試みは、まずメタボで成功するかどうかにかかっている。

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 今年1月下旬、都内の会館に日本内科学会、日本肥満学会など内科系8学会の代表が集まり、合同会議が開かれた。この8学会が平成17年に策定したメタボリックシンドロームの診断基準を見直すかどうかの検討が目的だった。

 この基準は、メタボに該当するかどうかの主要なリスクの内臓肥満を表す腹囲が「男性85センチ以上、女性90センチ以上」、血圧が「拡張期85mmHg以上、収縮期150mmHg以上」など4項目について決めたもので、特定健診に使う判定基準のベースにもなる。

 ところが、世界の糖尿病研究者で構成する国際糖尿病連合(IDF)が、アジア地域の腹囲基準を男性90センチ、女性80センチにするよう推奨するなど、数値をめぐり8学会の外部からさまざまな意見が出された。こうしたことから、健診をスムーズにスタートさせるうえで、各学会の立場を確認しておく必要があった。

 会議は約2時間かかった。診断基準をすぐに見直すということはなかったが、戦後の体格の向上による変化などを考え、健診で得られたデータをチェックするなどして再検討することも提案された。

 会議に参加した寺本民生・帝京大医学部教授は「極端に太った人が少ない日本型の肥満については、先進的な日本の科学的な肥満研究による基準を尊重すべきです。短兵急に変えることはないでしょう」と言明する。

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 メタボリックシンドロームは、内臓の周囲に脂肪が蓄積し(1)血圧が高い(2)空腹時の血糖が多い(3)中性脂肪などが多い−という状態があり、それが軽度であっても複数のリスクが重なっていれば、動脈硬化など生活習慣病を起こす可能性が高まるというもの。

 この考え方に沿って、特定健診では内臓肥満を表す腹囲と血圧、血糖、脂質を測って解析し、メタボの該当者・予備群であることが分かれば、運動や食生活の改善で内臓脂肪を減らすように保健指導する。これでさまざまな生活習慣病について、ひとまとめに原因を絶つことができる。この際、大半が投薬などの治療が不要なので大幅な医療費の削減につながる。

 厚生労働省がメタボ対策を柱に掲げ、大掃討作戦に乗り出したのも、このように被験者にわかりやすいうえ、健診項目が少なく測定も簡便で効率的に実施できるとの長所を考えてのことだった。

 飽食や車社会の進展で肥満者が増えるとともに、メタボから動脈硬化になり、心筋梗塞など心疾患を発症するケースが都心部を中心に増え、日本人の死因の16%(厚生労働省平成18年度の統計)を占める。脳卒中など脳血管疾患も減塩など血圧のコントロールで一時減少したが、再度、増加しはじめ11・8%(同)に達し、両者を合わせるとがんに匹敵する。メタボは自己管理で治せるだけに、その目安となる診断基準の決め方や、その持つ意味合いについて理解が必要になるだろう。(飽食社会取材班)

(2008/02/19)