■男女のメタボ発症率を反映
国民の健康維持と医療費の削減を目的にした特定健診・保健指導は、壮大な規模の予防医学ともいえる。
なにしろ40歳から74歳までの男女5600万人を対象に、健診結果を全国統一の形式で電子データ化する。データベースとして利用しやすいので、一気に解析して、腹囲、血圧、血糖、中性脂肪などメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクと動脈硬化をはじめ、心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病との関連をより詳細に明らかにでき、腹囲を減らすことの効果を確認できるからだ。海外の公衆衛生関係者らの問い合わせも多い。
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特定健診の基準の中でも、腹囲の数値(男性85センチ、女性90センチ以上)は、生活指導に重点を置く基準として採用された。「ズボンをはくたびにチェックできる」など変化がわかりやすいこともあって、またたく間に広まった。一方で、腹囲の数値が独り歩きしてしまい、1センチでもオーバーするとメタボになったと誤解するケースも出た。
また、昨春、国際糖尿病連合(IDF)が、アジア地域の腹囲の数値を男性90センチ、女性80センチにするように推奨したことなどから、「日本は男性の基準が厳しい」「体格が小さい女性の方の腹囲基準が大きいのはおかしい」などの意見も出ている。
もともと、日本の診断基準の腹囲の基準値は、厚生科学研究として大阪大グループがCT(コンピューター断層撮影装置)を使い、男女1193人の内臓脂肪断面積を測定した。メタボのリスクとの関連を統計学的に求めて、断面積100平方センチ以上をリスクとし、これに相当する男女の腹囲を計算した結果、出された数字である。CTの厳密な計測によるデータ収集は日本のほか、スウェーデン、カナダで行われているだけだ。
メタボの診断には、他のリスクとの重なりが条件なので、腹囲の基準を超えれば、病気というわけではなく、あくまで高血糖、高血圧を持っている人の中で、減量治療を優先するかどうかの目安である。
女性の腹囲基準の方が緩いのは、女性は男性より皮下脂肪が多いためで、メタボによる心血管病が女性の方が少ないことからみても、実態に即した頻度になっている。
「人間ドックの診断から見ても、日本の腹囲基準を使えばメタボの男女別発症頻度に近い結果が出ます。今後、的確な保健指導ができるでしょう」と和田高士・東京慈恵会医科大新橋健診センター所長は説明する。
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欧米と日本での肥満に対するスタンスの違いはある。欧米は全体の肥満を表すBMI(体格指数、体重を身長の2乗で割った値)が30という高度の肥満者が30%を占め、日本は3%にすぎない。日本人は、肥満の程度が軽いわりに、糖尿病や高血圧の頻度が高く、内臓脂肪の影響を受けやすい。このことからも、腹囲を減らす保健指導の効果が期待されているのだ。
それでも米国心臓病協会の「サーキュレーション」紙には、腹囲と内臓肥満、病気の関係でこんなデータが発表されている。
欧米、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど63カ国の医師が、2006年に18歳から80歳までの計16万8000人を対象に腹囲とBMIの測定を行い、心血管病と糖尿病の発症との関連を調べた。
その結果、いずれの病気も腹囲の関連の方が強く、内臓肥満の影響を知る主要なものさしであることが示唆された。心血管病の頻度が7%を超える腹囲は男性84センチ以上、女性92センチ以上で、女性の心血管病の頻度は腹囲88センチ以上で80センチ以下の約2倍に膨らんだ。つまり、女性の該当者を効率よく見つけるには、必ずしも男性より低く見積もる必要はなかったことになる。(飽食社会取材班)
(2008/02/20)