■早期発見へ研究成果を活用
全国1620万人と推計(厚生労働省平成14年度の実態調査報告)される糖尿病患者が、さらに増え続けている。
肥満などが原因の2型糖尿病が多くを占めていて、そのなかでも内臓の周囲に脂肪が蓄積するメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)にかかわるタイプを早期に見つけ、食事・運動療法で治すのが特定健診・保健指導のねらいだ。
◇
糖尿病は、エネルギー源であるはずの糖分(ブドウ糖)をうまく細胞内に吸収できないことから、ブドウ糖が血液中を高濃度で漂い、こんどは血管などを傷める方に向かう。気づかぬうちに病状が進行して動脈硬化や視力の低下、腎臓や神経の障害を起こすことがある。
判定基準では、食後10時間、絶食したあと血液中の糖分の濃度を測る「空腹時血糖」が主要なチェックポイントだ。この値が1デシリットル(dl、100ミリリットル)あたり100mg以上含まれると予兆があるとして保健指導に移る。ベースにした内科系8学会の診断基準(平成17年)は110mg以上で、それより10mg厳しくなったことになる。今回、診断基準から数値の変更が行われたのはこの1項目だけだった。
その理由の背景には臨床研究の進展がある。これまでの検査では見逃されていた「隠れ糖尿病」のチェックをするためだった。
食事のあと、食物が消化されて増加した血液中のブドウ糖は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの働きで細胞内に取り込まれ、通常の濃度に戻る。この活動の様子を知るため、結果として吸収されなかった血糖値を測り目安にしている。
メタボ型といわれる糖尿病は、内臓脂肪から分泌される悪玉ホルモンが組織に炎症を起こし、インスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が主要な原因とされる。動脈硬化による心筋梗塞(こうそく)、狭心症、脳卒中など大血管症(体内の太めの血管が関係する病気)について「隠れ糖尿病」といわれる糖尿病の予備群の時期から進行させるので、早期発見が不可欠だ。
「早期発見のためには、最初のサインが現れる食後の血糖値を測ることが必要で、これが最近の傾向です。しかし、食後の測定は空腹時血糖値のように標準化して集団検診に使うことが困難です。だから、特定健診では、空腹時血糖値の基準を下げることで、対応することにしたのです」と日本糖尿病学会理事の田嶼(たじま)尚子・東京慈恵会医科大教授は強調する。
数年かかって減量の成果が表れる特定健診・保健指導を効率よく進め、メタボを減らすためには、こうした研究の成果を早手回しに取り入れる必要があるのだろう。
◇
今回の判定基準に盛り込まれなかった項目に尿酸値がある。尿酸は食品の中のプリン体という物質が分解されてできる老廃物。尿酸は血液中に7mg/dl以上含まれると高尿酸血症といわれ、さらに増えると足指などに激痛が走る痛風を起こす。メタボとの関連が示唆されるデータが増加しており、今後、健診項目として再浮上してくる可能性もある。
こうした特定健診・保健指導の取り組みについて、日本内分泌学会理事長の中尾一和・京都大医学部教授は「メタボは内臓脂肪の蓄積を共通の基盤とする患者を分類し直したものなので、総患者数はほとんど増えてないはずです。むしろ、リスクが重積する人たちを一括して予防、治療する意義は計り知れません。発症してから病気別に治療するより、医療費は確実に減少すると考えられます」と話している。(飽食社会取材班)
(2008/02/21)